中国に強力な武器を与えた日本

韓国政府は危うさを認識していますか。

鈴置:もちろんです。金融監督院は「2016年12月 外国人証券売買動向」(1月16日、韓国語)の別紙8ページで、昨年の資金流出の要因に「北朝鮮の核実験」(1月)、「Brexit」(6月)、「米利上げ」(12月)と並び「THAAD配備決定」(7月)を挙げました。

 2016年夏に韓国が突然態度を変え、日本にスワップ締結を頼んできたのも当時、中国がTHAADの報復として資金を引きあげる素振りを見せたからと思われます。

 要は日本のスワップ中断は、中国に強力な対韓攻撃兵器を与えることにもなったのです。韓国から見れば、日中に金融面で包囲網を作られてしまったのです。

韓国には米国に助けを求める手がありませんか?

鈴置:米国がスワップを結ぶのは原則、日・英・スイス・EUなど国際通貨の発券国・地域だけです。

 そのうえ韓国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加したうえ人民元で国債を発行しました。ドルの覇権を揺らすべく動く中国の尻馬に乗っているのです(「『トランプからの請求書』は日本に回せ」参照)。

 米国の金融界からすれば韓国はすでに中国側の国です。米国も韓国に裏切られっぱなしなのです。よほどの事情がない限り、スワップは与えないでしょう。

あうんの呼吸で「お灸」

日中は談合したのでしょうか。

鈴置:それはないと思います。日本政府は「韓国のやりたい放題」をこれ以上、許し続けるとますます調子に乗って無茶苦茶をしてくると考え「スワップ中断」を決めたのでしょう。

 ただ結果的に、韓国になめられっぱなしだった日中が、あうんの呼吸で歩調を合わせ、韓国にお灸をすえる形となりました。

 日本だって、もし中国が韓国の思い通りに外貨を供与する状況だったら「スワップ中断」カードを切ったかは疑問です。威嚇効果に乏しいからです。

 韓国は「中国とのスワップがあるから困らない」と日本に言い返したでしょう。まあ、スワップと言っても人民元スワップですけれどね。

 さきほど申し上げたように、中国にとっても日本の「スワップ中断」は援軍になりました。「韓国売り」という新たな武器を得たうえ、今年10月に満期の来る中韓スワップの“値段”もつり上がりました。