日中両国からの“お灸”に韓国は対処できるのか(写真は昨年8月、日中韓外相会談の一コマ、写真:ロイター/アフロ)
日中両国からの“お灸”に韓国は対処できるのか(写真は昨年8月、日中韓外相会談の一コマ、写真:ロイター/アフロ)

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 日韓スワップ中断で、中国が対韓攻撃用の強力な武器を得た。「韓国投げ売り」だ。韓国に怒る日中が、意図せずして韓国包囲網を作ることになった。

日本は韓国の友達じゃないか

鈴置:日本の朝鮮半島専門家が韓国人から泣きつかれるケースが相次いでいます。「何とかして通貨スワップを再開できないか」と頼まれるのです。経済とは全く関係ない部署の公務員も、経営者までも一斉に「スワップ」を頼んできます。

 「困った時に助けてくれるのが友達ではないか」と言われ「さんざん日本の悪口を世界中で言っておきながら、困った時だけ友達というわけか……」と苦笑する日本人もいます。

 もちろん韓国政府の肝いりです。聯合ニュースの「少女像問題『必ず克服できるよう努力する』=大統領代行」(1月23日、日本語版)が、大統領権限代行の黄教安(ファン・ギョアン)首相の以下の発言を報じています。

  • (日本とのあつれきを解消するため)さまざまなルートで、さまざまなチャンネルを通じて協議を進めている。

 釜山総領事館前の慰安婦像設置を放置した韓国政府に対し1月6日、日本政府は「4つの対抗措置」をとりました(「『百害あって一利なし』の日韓スワップ」参照)。

■日本の「慰安婦像」への対抗措置
・長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事の一時帰国
・通貨スワップ再開に向けた協議の中断
・次官級による日韓ハイレベル経済協議の延期
・釜山総領事館員の釜山市関連行事への参加見合わせ

 その1つ「スワップ再開に向けた協議の中断」に韓国政府が音をあげ始めたのです。

スワップよりも自尊心

韓国政府は「日本のスワップなど不要。日本が頼んできたら話を聞いてやってもいいが」と言っていませんでしたか。

鈴置:公式的にはそう豪語しています。聯合ニュースの「日本とのスワップ協議中断『影響ない』=韓国高官」(1月17日、日本語版)が企画財政部の宋寅昌(ソン・インチャン)国際経済管理官(次官補級)の1月17日の記者懇談会での発言を伝えています。以下です。

  • (スワップ再開に向けた協議を日本が中断したことによる)大きな影響はない。日本が協議の場に出てくるなら私たちも(姿勢を)オープンにするが、この状況で(韓国が先に再開協議を)要請することはしない。

 韓国メディアも突っ張って見せました。「影響などない」理由を列挙したうえ「日本に頭は下げてはいけない」と口を揃えたのです。

 例えば、中央日報の「韓国、外貨準備3711億ドル・・・『韓日スワップにこだわる理由ない』」(1月7日、日本語版)です。文章を整えて引用します。

  • 少女像(慰安婦像)問題をめぐり国民の自尊心を傷つけてまで通貨スワップにこだわる理由はない
  • 2016年末基準で外貨準備高は3711億ドルある。1997年の通貨危機(300億ドル)、2008年のグローバル金融危機(2000億ドル)当時に比べてはるかに多い。
  • 宋寅昌・企画財政部国際経済管理官は「現在保有中のスワップが終了したわけではないため大きな影響はない」とし「スワップの満期が昨年に終了したマレーシアと事実上延長に合意したほか、アラブ首長国連邦(UAE)とも延長の協議をしている。スワップの規模はまた増える」と述べた。
  • チェンマイ・イニシアティブ(CMI)加盟国(韓日中+ASEAN10カ国)の合意だけで使える基金の比率を、現在の30%から40%に増やすと日本メディアが報じた。この場合、韓国は危機発生時にCMI出資金(384億ドル)の40%の154億ドルを活用できる。残りの60%は国際通貨基金(IMF)と協議して引き出して使える。

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