早くも裏切り

韓国が裏切る兆しはあるのですか?

鈴置:あります。1月9日の南北閣僚級会談で韓国側が「非核化に関する対話」を提案したところ、北朝鮮側は強い不満を表明し、無視しました。

 韓国側は「非核化」をそれ以上強く推しませんでした。それどころか米韓合同軍事演習の中断の布石となる合意も交わしました。

 「南北閣僚級会談・共同報道文の骨子」の③「南北関係で提起されるすべての問題を、我が民族が朝鮮半島問題の当事者であるとの立場で対話と交渉を通じ解決する」です。

南北閣僚級会談・共同報道文の骨子
  1. 平昌冬季五輪・パラリンピックが成功裏に進展し、民族の地位を高める契機となるよう積極的に協力する
  2. 軍事的緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的な環境を醸成し、民族の和解と団結を図るために共に努力する。緊張状態を解決するため、軍事当局者会談を開催する
  3. 南北関係で提起されるすべての問題を、我が民族が朝鮮半島問題の当事者であるとの立場で対話と交渉を通じ解決する。関係改善のための南北閣僚級会談と各分野の協議も開催する

 米国の目には、南北が裏でつるんで米国を騙しているように映ったはずです。というか、実際そうなのですが。

 翌1月10日の文在寅大統領の会見は異様でした。「南北関係の改善とともに北の核問題を解決せねばならぬ」「この2つは別々に処理できる問題ではない」「核問題解決に誠意を見せない場合は、国際社会は制裁、圧迫を続けることだろう」と「非核化」をしつこいほどに強調したのです。米国から相当の圧力がかかったのでしょう。

 韓国メディアも驚きました。「親北」の文在寅大統領がせっかく南北対話を実現したのに、北朝鮮を怒らせる「非核化」をこれほどしつこく持ち出すのは意外だったのです。

 中央日報系のテレビ局、JTBCの「文大統領『会談自体が目標ではあり得ない』……『非核化』を強調」(1月10日、韓国語、動画付き)は、「大統領は『北朝鮮の核』『非核化』に23回も言及した」と切り出しました。

 親米保守派は米国に配慮した大統領の発言に安堵しました。中央日報の社説「会見で確認された文大統領の現実的な対北朝鮮認識」(1月11日、韓国語版)はこう書きました。

  • 非核化が抜けた対話は北朝鮮・米国の葛藤と同盟の離間を煽り、北朝鮮に核武装の時間だけ与える最悪の手だ。

「審判の時」が来る

 この社説も「豹変するトランプ」を警戒するよう呼び掛けました。その部分を訳します。

  • トランプ大統領は韓米合同演習を延期したうえ、南北対話を100%支持すると表明し、文大統領が久しぶりに「運転席」に座るよう力を尽くしてくれた。
  • しかし、南北対話が非核化に進めず、北朝鮮に時間稼ぎする舞台に転落すれば、米国の態度は急変し得る。南北対話が北・米対話につながらなければ、今年の半ばに「審判の時間」が来る、との海外メディアの警告を聞き流してはならない。

「審判の時間が来る」とは?

鈴置:WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)の「Amid Signs of a Thaw in North Korea, Tensions Bubble Up」(1月9日)を指すと思われます。

 記事の最後に「外交的な展望が開けるか否かによって、2018年の半ばに審判の時(a time of reckoning)が来る」とあります。

今年7月には米国は軍事行動に出る、というのですね。

鈴置:北朝鮮が核を放棄しなければ、です。一応、韓国に交渉させ、国連制裁の効果も見る。しかし、あまりに時間をかけると北朝鮮が米国まで届くICBM(大陸間弾道弾)を完成して空爆がやりにくくなる。7月が限界だろう、との根拠でしょう。