1月9日の南北閣僚級会談実現で韓国は「主導権を握った」と胸を張るが…(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

前回から読む)

 韓国人の「妄想」が激しくなってきた。

米中の支持で「運転席」に

鈴置:韓国人が「平昌(ピョンチャン)冬季五輪をテコに、我が国が朝鮮半島の主導権を握った」と大喜びしています。

 聯合ニュースの「米中、文大統領を『運転席』に座らせる……南北をつなぐ北の核外交が始動」(1月11日、韓国語版)が典型です。書き出しを訳します。

  • 南北対話を呼び水に北朝鮮の核問題を解決しようとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、米中両国の首脳が確かな応援に乗り出した。
  • 朝鮮半島周辺の力の秩序を導くG2(主要2カ国)である米国と中国が支持する中で、文在寅大統領の「朝鮮半島運転席論」が力強さを増している。
  • (この政権で)南北初の閣僚級会談を開いた翌日の1月10日、文大統領はトランプ(Donald Trump)大統領と電話で協議した。これに続き翌11日午後には習近平主席と通話、南北閣僚級会談の結果を説明したうえ今後の対応に関し協議した。
  • 金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮労働党委員長と「間接対話」をした後に連日、米中首脳とその結果を迅速に共有し、対応を協議したと言える。

「五輪休戦」で一挙に挽回

すごい喜びようですね。

鈴置:韓国人は、朝鮮半島の行方を決める時でさえ、自分たちは蚊帳の外に置かれてきたとの不満を持っています。

 米韓首脳会談(2017年6月)を終えた文在寅大統領は「我々が対話を通じ朝鮮半島問題で主導的に動くことへの支持を取り付けた」と説明しました。

 トランプ大統領を説得し、ついに運転席に座った、と誇ったのです(「早くも空回り、文在寅の『民族ファースト』」参照)

 ところがその後、韓国は「運転席に座る」どころか、北朝鮮はもちろん、米中からもまともなプレーヤー扱いされませんでした。そこで韓国では「文大統領が座る運転席にはハンドルが付いていない」といった自嘲の声があふれました。

 でも今、韓国は「五輪休戦」を唱えることで、自分中心に世界が回り始めたと考えています。これまでの「ふがいない韓国像」を一気に覆す快挙です(「『五輪休戦』で金正恩の窮地を救う文在寅」参照)。

 北朝鮮が平昌冬季五輪に参加を表明。それをテコに韓国は米国に合同演習の延期を飲ませました(「五輪休戦を巡る動き」参照)。

●五輪休戦を巡る動き
2017年
11月29日北朝鮮、ICBM「火星15」試射、「核武装を完成」
12月19日文在寅大統領、米NBCに「五輪期間中は合同演習を中断するよう米国に提案した」
2018年
1月1日金正恩委員長、新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意ある。核のボタンは常に私の机の上にある」
1月2日文在寅大統領、南北対話の速やかな実施を指示。韓国、北朝鮮に「閣僚級会談の1月9日開催」を提案
1月3日北朝鮮、南北連絡チャネルを再開、五輪参加を協議と発表
1月4日米韓首脳、電話協議で合同軍事演習の延期に合意
1月5日北朝鮮、閣僚級会談の開催を受諾
1月6日トランプ大統領、会見で「いつも(北朝鮮との)対話を望んでいる」「(無条件での対話は)しない。それは彼(金正恩)も分かっている」
1月9日板門店で南北閣僚級会談
1月10日文在寅大統領、新年記者会見
1月10日米韓首脳、電話で南北会談に関し意見交換
1月10日トランプ大統領、会見で「南北対話が世界のためになることを期待する。今後、数週間、数カ月の間に起こることを見守ろう」
1月11日中韓首脳、電話で南北会談に関し意見交換
1月11日トランプ大統領、WSJに「金正恩とはたぶんいい関係がある」
1月15日南北、五輪に関する局長級実務協議
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2月9-25日平昌冬季五輪
3月9-18日平昌冬季パラリンピック
注)トランプ大統領はWSJ報道の「いい関係がある」との発言は「いい関係になるだろう」を誤って報じたと1月14日、ツイッターで主張

 さらに、南北閣僚級会談の開催にこぎつけた文在寅大統領は、米中首脳にその結果を説明する快感を味わいました。それを見た韓国人は「やはり我々は運転席に座っていたのだ!」と小躍りしたのです。