IMFに行けばよい

「一部の邦銀が韓国に貸し込んでいる。だから韓国がデフォルトしないよう、スワップを与えるべきだ」という人もいます。

真田:理屈になりません。それは民間金融機関の個別リスクです。韓国の危険性を見落とした銀行の責任なのです。

 日本の金融機関の韓国への債権が不良債権化し、それが日本国経済を著しく毀損するという場合を除いて、そうした議論が出ることはあり得ません。私の認識するところ、今はそんな状態にありませんので、理屈にならないと申し上げたのです。

鈴置:デフォルトを起こせば金融だけでなく貿易取引もできなくなり経済全体が崩壊します。韓国だってそれは避けたいでしょう。本当に困ったら、IMF(国際通貨基金)にドルの緊急貸し出しを頼めばいいのです。

 IMFも1997年のように厳しい条件は付けないでしょう。処方箋を間違えて韓国などの状況を悪化させた、と批判されましたから。

米国が日本に対し「韓国とスワップを結んでやれ」と言ってこないでしょうか。

真田:まずないと思います。米国だって、中国に鞍替えしようとしている韓国に甘い顔はしません。

 在韓米軍を守るためのTHAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)配備を拒否し、米国が苦労してまとめた日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)や慰安婦合意を蹴り飛ばす――。そんな韓国を助けるほど米国はお人好しではないと私は見ています。

 万が一、私の見通しが外れて、米国が韓国とスワップを結んでやれと言って来たなら、その時はおもむろに再締結すれば済むことです。

鈴置:仮想敵の陣営に走る国の危機は助けない、ということですね。当たり前の話で、日本もそうあるべきです。

真田:むしろ今後、日本が韓国にスワップを与えようとしたら、米国は止めてくるかもしれません。1997年の通貨危機の際もそうでした。

鈴置:あの時、日銀が韓銀にスワップを付けようとした。すると直ちに米国が「やめろ」と言ってきました(「米国は『日韓スワップ』を許すか」参照)。

 邦銀は最後まで韓国にドルを供給していた。しかしその邦銀に対しても、日本政府経由ですが米国政府が供給を止めさせました。

もう、米韓同盟は持たない

なぜ、米国はそれほどに厳しい姿勢をとったのですか?

鈴置:米韓関係が悪化していたからです。でもこれから、当時とは比べものにならないほど関係は悪くなります。米韓同盟の打ち切りもあり得ます(「『キューバ革命』に突き進む韓国」参照)。

真田:1月20日、トランプ(Donald Trump)政権がスタートします。就任前から、実利を徹底的に追っています。

 トランプ氏はツイッターを通じ、米国企業やトヨタのメキシコへの工場移転を露骨に牽制しました。前例のない話です。そんな米国にとって韓国は経済面でさほどプラスになる存在ではありません。

 軍事的には完全なお荷物です。ニクソン(Richard Nixon)政権(1969―1974年)の時から、在韓米軍の縮小・撤収が米国の課題でした。トランプ政権はそれを加速する可能性が高い。

 この政権は軍人が支えることになります。その軍が韓国に極めて厳しい。米国はこれまで以上に韓国に冷たい姿勢で対することになるでしょう。

鈴置:2010年頃から「米韓同盟はもう、長くは持たない」との米軍幹部のつぶやきが日本にも伝わって来ました。

 中国と敵対の度を強める米国。一方、恐怖心から中国との関係をとにかく良くしたい韓国――。米韓の間で主敵が完全に異なったのです。韓国が在韓米軍へのTHAAD配備を長い間、拒んだのも米韓同盟のきしみの象徴です。

 興味深いことに、同じ頃から米国の機関投資家が韓国株を手放し始めた。ペンタゴン(国防総省)だけではなく、ウォール街も韓国と距離をとり始めたのです。

真田:そこが注目点ですね。米国の軍と金融界は地下茎でつながっていて、この2つが外交の中軸です。

 そもそも「義」のない国は信用されません。いくら国際政治が利害で動くといっても、平気で約束を破ったり、同盟国の仮想敵にすり寄る国は見捨てられるものです。