政府の言いにくいことは与党が

 なお、この社説の日本語版の見出しは「核保有、韓国政府は米国と真摯に意見交換を」です。「核保有」という言葉も入れ、より鮮明です。

 韓国政府は、本音を語りにくい時は与党首脳部に語らせます。今回もそのケースではないかと思います。

 韓国政府は自分の置かれた際どい状況と、必死さを訴えることで国際社会の強力な対北制裁を引き出したい。しかし、あまり露骨に核武装を語れば、世界からの共感を得にくくなります。

 一方、朝鮮日報はもともと、シニア記者のコラムで核武装を主張してきました(「一歩踏み出した韓国の核武装論」参照)。

 それがついに、与党執行部の発言を引用することにより、核武装を議論しようと、社説ではっきり呼び掛けるに至ったのです。

核のない日本は降伏した

ほかの新聞の社説は?

鈴置:中堅紙の文化日報も、1月7日の社説で明確に核武装を検討すべきだと書きました。「対北政策のパラダイムを『全方位核封鎖』に変えよ」(韓国語)です。

 同紙は事実上、対北援助の窓口になっている開城工業団地の見直しや、THAADの導入、対北拡声器放送などの心理戦の強化とともに「自衛的核武装」を唱えました。ポイントを引用します。

  • 現実主義的国際政治学の父、ハンス・モーゲンソー(Hans J. Morgenthau)は「非保有国が核保有国に刃向かっても滅ぼされるか、降伏するか、どちらかを選ぶしかなくなる」と予測した。
  • 核の抑止は核に頼るしかないというのが核政治学の基本だ。核を持たなければ、相手の慈悲心に生命と運命をさらすしかない。
  • 国際政治の力学上、独自の核武装が難しい場合は米国の戦術核を再導入する問題を議論すべきだ。(北の核放棄に向けて)中国を圧迫する手段にもなる。
  • 大韓民国は今「まさか」との安易な考えと「米国など国際社会が解決してくれるだろう」といった依存心を捨てなければならない。

 なお、モーゲンソーは「核を持たない国は核を持つ国に降伏するしかない」具体的な例として、広島と長崎に原爆を落とされた後の日本を挙げています。日本語では岩波文庫の『国際政治(上)――権力と平和』(292ページ)で読めます。

次ページ 中国への説得材料にも