(前回から読む)
1月6日、北朝鮮が4回目の核実験を実施した。韓国はどう出るのか。
解決の意思がないオバマ
前回の「韓国も核武装か、中国に走るか」の予想通り、北朝鮮が4回目の核実験をするやいなや、韓国で核武装論が語られ始めましたね。
回数 | 実施日 | 規模 |
---|---|---|
1回目 | 2006年10月9日 | M4.2 |
2回目 | 2009年5月25日 | M4.7 |
3回目 | 2013年2月12日 | M5.1 |
4回目 | 2016年1月6日 | M5.1 |
鈴置:ええ、実験翌日の1月7日、朝鮮日報が社説「米中にも解決が難しい北の核、国と国民を守る非常措置をとらねばならない」(韓国語版)で「核武装を議論しよう」と主張しました。要約します。
- 北朝鮮の核は大韓民国の存亡をかける最上級の懸案だ。だが、オバマ政権は解決の意思を失った状態だ。中国も北朝鮮の存在が自らにとって戦略的価値があるとのこれまでの立場を変えていない。
- 政府は「国際社会と協力し、国連で追加の制裁措置を講じる」と言うが、それは20年間も繰り返してきた空しい話だ。
- 高高度防衛ミサイル(THAAD)などの導入も進めるべきだが、いずれも核の前では限界がある。
- 1991年の朝鮮半島非核化宣言の前後に撤収した、米国の戦術核兵器の再配置を積極的に議論することも可能だ。
- 最近、米国の一部専門家の間では「中国とロシア、北朝鮮が核を保有している状況で、韓国など同盟国が核兵器を持つのがいいのか、米国が核の傘を提供するのがいいのか、検討せねばならない」との意見まで出ている。
- 韓国の核武装は現実的には容易ではない。が、だからといって北の水爆実験まで見ながら「米国と協議さえできない」では、話にならない。
国民を守るには不可欠な核
「米中も国連も頼りにならない」との韓国人の悲愴感が伝わってきますね。
鈴置:北朝鮮の核ミサイルは日本にも向けられるのですから、日本人ももっと悲愴な覚悟を固めるべきなのですが……。
この社説が載った1月7日には、与党セヌリ党の幹部も相次いで核武装に言及しました。
元裕哲(ウォン・ユチョル)院内代表が「自衛権の次元で平和的な核兵器を保有すべき時だ」と述べ、米国の戦術核の再配置を提案しました。金乙東(キム・ウルドン)最高委員は「核兵器の独自開発」に言及しました。
これを受け、朝鮮日報は翌1月8日にも「独自の核開発を米国と議論すべきだ」との社説を載せました。「北の核への対応カード、全てを準備し、原点から検討する時」(韓国語版)です。2人の与党の大物議員の発言を引用したうえ、以下のように主張しました。
- 与党セヌリ党から提議された「核保有論」について公論に付さねばならない。
- 国際社会が容認しない状況で、韓国が独自に核開発するのは現実的には難しい。しかし、国の安寧と国民の生命を守るには不可欠であることに関し、米国とも論議を始める必要がある。

2015年9月3日、朴槿恵大統領は中国・天安門の壇上にいた。米国の反対を振り切り、抗日戦勝70周年記念式典に出席した。
10月16日、オバマ大統領は、南シナ海の軍事基地化を進める中国をともに非難するよう朴大統領に求め、南シナ海に駆逐艦を送った。が、韓国は対中批判を避け、洞ヶ峠を決め込んだ。韓国は中国の「尻馬」にしがみつき、生きることを決意したのだ。
そんな中で浮上した「核武装」論。北朝鮮の核保有に備えつつ、米国の傘に頼れなくなる現実が、彼らを追い立てる。
静かに軋み始めた朝鮮半島を眼前に、日本はどうすべきか。目まぐるしい世界の構造変化を見据え、針路を定める時を迎えた。
『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』に続く待望のシリーズ第7弾。12月15日発行。
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