石谷桂子氏(以下、石谷):1990年にP&Gに入社したというのは西口さんと同じですが、私の場合は結局26年間いましたね。P&Gでは川上から川下まで色々な形のマーケティングに関わってきましたが、買収先の会社に出向する機会もあれば、米国の本社でグローバル戦略を担当する機会も持ちました。

 P&Gで学んだことは、マーケティングはビジネスを考える根幹ということでしょうか。マーケティングは多くの企業で、販売促進のためのツールや製品を作るといった一部だけで捉えられることが多いと思います。だけど、マーケティングというのはビジネスの目的はどこにあって、そのために顧客のどのようなニーズを掴まなければならないかという経営の本質に関わってくるものだと思います。その基礎は、P&Gで学ばせてもらいましたね。

いしたに・けいこ 1990年プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン入社。「ファブリーズ」の日本導入などを担当し、2001年にマーケティングディレクター就任。06年から米国本社に勤務、ペットケア部門のブランド・製品戦略を担当。13年からP&Gジャパンでマーケティング担当執行役員。16年からUCC上島珈琲常務取締役。

西口:今石谷さんが話したことはすごく重要で、マーケティングというのは経営の軸なんですよね。日本企業におけるマーケティングの役割は残念ながらまだ小さくて、すごく機能分化されてしまっていると感じています。販売促進や広告、デジタルもバラバラで、商品開発はマーケティングの役割ではなかったりする。

 マーケティングとは、お客様から全部スタートして、新しいベネフィットを創造する。それをどのような製品やサービスが作れるのかという思考方法で、全部を組み立てるのだと思います。まだ何も分からない20代の時にそれを基礎から叩き込まれたという意味では、P&Gでの経験は本当に大きかったですね。

ブランドマネージャーは輸送コストにまで関わる

音部さんはいかがですか。

音部:お二人が話されたことに加えて、「利益責任」でしょうか。いわゆる、P&Gの「ブランドマネジメント制」でいうと、単に昨日まで課長だった人を「今日からお前はブランドマネージャーだ」で済ませるのではなく、ヒト・モノ・カネの大きな資源を、実際にブランドマネージャーの下に集約させるんです。だから、ブランドごとのPL(損益計算書)があるし、マーケティング予算、輸送コストまで、全部「お前に利益の責任がある」と言われるわけです。

 例えば輸送コストなんかは、本来的に管轄かといわれればどうか。でもそこにもブランドマネージャーが関わろうと思えば、入っていくことができる。それは、「このブランドは私の責任です」という覚悟と免罪符でもあるわけです。売り上げなり利益に、そうした責任と覚悟を持たせてもらえる環境だったということは、非常にいい経験だったと思います。