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まるで空飛ぶスポーツカー

 まず驚いたのがジェットエンジンをONにしたのに音が全く聞こえないこと。まるで高級車のような静かさです。機長がおもむろに滑走路に向けて移動開始した際に「あれ?エンジンかけてないのに、モーターか何かで動かしてるの?」と勘違いしたほどでした。そしていよいよ滑走路からの離陸です。

 あいにくこの日のシカゴは雨でしたが、機長がフルスロットルにした瞬間に、スリップすることもなく、すぐに離陸速度である110ノット(時速204km)に達して、ふわりと軽くテイクオフ。スムーズ!

 ホンダジェットと並行して開発された双発ジェットエンジンから放たれる圧倒的なパワーと共に、毎分4000フィート(約1220m)以上というとんでもない速度(僕の練習機は1分間に500フィート上昇するのでいっぱいいっぱい)で、スムーズに上昇。あっという間に最大高度43000フィート(約13100m)、最大速度422ノット(782km/h)に到達しました。まるで空飛ぶ「スポーツカー」です。最大航続距離は約2661kmと、この機体クラスとして最長。東京から上海まで飛ぶことが可能です。

 43000フィートという圧倒的な高さからの景色は、宇宙を感じる深い青の空と、下に広がる白い雲海。これが個人所有の小さな飛行機で実現しているなんて夢の世界です。

 飛行計器には様々な最新機能が搭載されていますが、特に便利なのは、25マイル以内を飛んでいるほかの飛行機をリアルタイムで、高度差とともに映し出す機能。画面の黒いダイヤマークが近くを飛ぶ飛行機の位置。数字は100フィート単位の自機との高度差。例えば「+48」とあれば、自機より高度4800フィート(約1460m)上方に、その飛行機が飛んでいるという意味です。とてもわかりやすい!

 一般的な旅客機は、高度35000フィート(約1万m)くらいを飛行します。最大高度43000フィート(約13100m)のホンダジェットは一般的な旅客機よりもかなり高いところを巡行するため「ぶつかるかも」という心配がありません。

 上の映像は2000フィートの高度差で旅客機とすれ違った様子を撮影したものです。お互いに時速800kmくらいですれ違っていますので、相手の飛行機はまるでロケットのように見えます。とてもじゃないですが、目で捉えてから逃げるというレベルではありません。

 また空気が薄い場所を飛ぶため、風切り音もなく「とても静か」なのも特徴です。諸元スペック表だけでは分からない、藤野道格社長のこだわりがここにありました。