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(写真:AUDI AG、以下同)

 フォルクスワーゲングループとしては、初の量産プレミアムEVとなる「アウディe-tron」に試乗する機会を得た。

 フォルクスワーゲン(以下VW)グループは、いま2025年までに50車種の電動車を投入し、EV比率を25%にまで高める目標を掲げている。11月には2023年までに電動化や自動運転など新たなモビリティに向けておよそ440億ユーロ(約5.6兆円)の投資を行うと発表。同グループからは、2020年には「ポルシェタイカン」、VW「I.D」シリーズ、VW商用車などのEVを発売することがすでにアナウンスされている。

 ここで少し日本のEV事情を振り返ってみる。リチウムイオン電池を使った初の量産EVは2010年に登場した三菱i-MiEVだった。同年には初代日産リーフも登場する。i-MiEVは現在も継続販売されているが、軽自動車をベースに約300万円という価格、一充電走行距離164kmというスペックなどからヒットには至らず2017年の国内販売台数は約150台にまで落ち込んでいる。一方、リーフは2017年に2代目にモデルチェンジし、一充電走行距離は400kmに到達。2018年にはグローバル累計販売台数30万台、国内累計は10万台を突破した。またプレミアムEVマーケットは、2013年に発売されたテスラのモデルSが皮切りとなり、同社の寡占状態だった。正式な国内販売台数は発表されていないがモデルSやXなど数千台が走っているという。そしてようやく自動車メーカーがこの市場に乗り出した。まず日本で発表を行ったのがジャガーだ。2018年9月に初のEV「I-PACE」を発表。納車は2019年初頭を予定する。

産油国でEVに試乗する、そのこころは?

 そうした中、2025年までに年間300万台のEV販売をもくろむVWグループの急先鋒が、「アウディe-tron」だ。日本での発売は2019年年央を予定する。国際試乗会は、アラブ首長国連邦の首都アブダビで行われた。産油国でEVに乗るなんてシュールな……と思っていたが、出発地点のマスダールシティに到着するとその意図が明らかになった。

 アブダビ国際空港からクルマで数分のところにあるマスダールシティは、2006年より砂漠のど真ん中に建設が進むスマートシティだ。人口は約5万人を想定し、太陽光や熱、風力など自然エネルギーを活用してサスティナブルな都市を作る計画で最終的には2020~2025年の完成を予定する。シティ内では内燃エンジンをもつ自動車の使用は認められておらず、小型モビリティとして自動運転EVなどの運用がすでに始まっている。e-tronにはうってつけの場所というわけだ。

マスダールシティは本来であれば2015年に完成予定だったが、リーマンショックなどの影響で計画が大幅に遅れており、2025年あたりの完成をめどにいまも建設が進められている。近隣には約5万人の都市に電力供給を行うため約9万枚ものソーラーパネルが設置されている。
ボディサイズは全長4.9m、全幅1.94m、全高1.62m、ホイールベース2.93mと、全長全幅はちょうどアウディのSUVであるQ5とQ7のあいだで、全高はQ5よりも約40mm低い。前後アクスルに1基ずつ、計2つのモーターを搭載して四輪を駆動する。システム出力は通常時は合計265kW、ブーストモード時には最大300kWを発揮する。最大トルクは通常時は561Nmで、ブーストモード時は664Nmとなり0~100km/h加速は5.7秒で到達する。バッテリー容量は95kWhで、100kWhのテスラモデルSやXとほぼ同等の数値だ。そして一充電航続可能距離は400km以上(WLTPドライビングモード)という。
直線基調のインテリアの真ん中には上下に2つの大型モニターが備わる。シフトスイッチは横長で、操作は手のひらを覆いかぶせるように持って親指と人さし指をタップすることで行う。R、P、Dなど使うポジションは普通のATとかわらない。後席もセンタートンネルの張り出しもほとんどなく足元も広い。