自然界から隔絶した環境で安全に魚介類を育てられる陸上養殖。生で食べても「あたらないカキ」や、消費地の近くで育成する「街育ちの魚」。新しい高付加価値の魚介類が生まれ、陸上養殖の普及を阻むコストの壁が崩れつつある。

陸上だけでカキを育てるのに成功した
●沖縄・久米島のゼネラル・オイスター養殖設備
成長したカキを手にするゼネラル・オイスターの吉田琇則社長(写真手前)

 沖縄本島から約100km西方にある沖縄・久米島。エメラルドグリーンの海に面する沿岸部に立てられたプレハブ小屋で、世界初となるカキの完全陸上養殖プロジェクトが進められている。目指すのは、生で食べても「食あたりしない」カキの大量生産だ。

 手掛けるのは、全国で33店舗のオイスターバーを運営するゼネラル・オイスター(東京都中央区)。同社の吉田琇則社長は「食あたりのリスクが理由で、カキを取り扱わない飲食店は多かった。懸念を解消できれば大きな商機が生まれる」と力を込める。

 カキがなぜ、食あたりを引き起こすのか。原因は養殖で使う海水の汚染にある。カキは1時間で20リットルもの海水を吸い、吐き出す過程で水中の栄養分を体内に取り込む。これを繰り返すことで、海水に含まれるウイルスがカキの内臓などに蓄積していく。こうして育ったカキを十分に加熱せずに食べると、食あたりになりかねない。

 ならば、汚染と隔絶した「陸上」でカキを育てればいい。そう考えた吉田社長が目を付けたのが、久米島の「海洋深層水」だった。