実現しそうで、しない輸出

 自国向けのパイが限られるのであれば、対外輸出によってそれを補うことはできないか、というのは誰しも考えるところ。米国ですらそうしているが、自国の市場が小さいヨーロッパ諸国やイスラエルはさらに、武器輸出に熱心である。日本の近隣では韓国がそうだ。

 実のところ、世界の武器輸出市場は供給過剰である。日本に限らず、どこの国も自国向けで足りない需要を海外向けで補おうとして、しのぎを削っている。そこに新参者の日本が参入して、いきなり長打を放つような大口案件を獲得できるだろうか。

 そして一方では、「低コスト」と「相手構わず」を武器にしている武器輸出国もある。具体的な名前は挙げないが、欧米諸国が人権問題や政治的な制約から輸出を躊躇するような相手でも、「買ってくれるのなら相手は問わない」として小火器や対戦車ロケットなど、地域紛争では不可欠の武器を売ってしまう国はいくつもある。

 日本が2014年4月に防衛装備移転三原則を閣議決定した後で、海外からの引き合いが皆無というわけではない。先に挙げたオーストラリア向けの潜水艦に加えて、インドなどの国がUS-2救難飛行艇に関心を示しているとする報道も出ている。ただし「成約」に至った事例は皆無に近い。

 理由は簡単である。まず、日本製の装備品は実戦で実績を示したことがない。国として戦争を経験せずに済んだのは幸せなことだが、裏を返せば日本の防衛品が実戦でどれだけ使えるかは分からないということである。

 また、これまで自衛隊という特定の顧客だけを相手にして、自衛隊のニーズに合わせた製品だけを作ってきたのが日本の防衛産業だ。輸出できないのだから、そうなるのは必然だが、そこに落とし穴がある。

 自衛隊のニーズにだけ合わせた製品を作ることと、さまざまな海外カスタマーのニーズに合わせた製品を作ることは別物である。多様なニーズに対応できるだけの柔軟性を持たせた設計が必要になるし、相手国が技術移転や生産参画を求めてきた場合にどう対応するか、というノウハウも必要になる。

 オーストラリア向けの潜水艦でも出た話だが、日本が有している技術面のノウハウや優位性をどう秘匿するか、それと相手国の技術移転・生産参画といった要求の間でどう折り合いをつけるか、という課題を解決するノウハウは、まだ日本にはない。そこで「日本で製作した完成品を輸出します」といえば商談は成り立たない。

 実は、こうした問題は日本が海外製の装備を調達する場合にも同様について回っている。以前であれば日本国内でのライセンス生産が認められたものが、近年ではライセンス生産ができない、あるいは限定的になる傾向が出てきているからだ。

 航空自衛隊の戦闘機を例にとると、F-4EJファントムと比べてF-15Jイーグルでは日本国内での生産比率が下がったし、F-35ではライセンス生産が認められず、一部の部品の製作と最終組み立てだけにとどまってしまった。

 ライセンス生産ができないブラックボックス化の傾向は、今後、進むことがあっても後戻りはしないだろう。これもまた、日本のメーカーに回る仕事を減らす方向に働く要因である。