港に出入りする船の数から経済指標を予測できる

ユーザーとして想定している業界はありますか。

中村:すでに急速に伸びているのが農業。衛星から撮影した画像で作物の生育状況がわかります。その生育データに分析を加えれば、収穫適期の把握、水・肥料の管理など、農家がぜひ手に入れたい情報になります。

 シンクタンクなどもユーザーとして有望だと思っています。港を撮影した画像では出入りする船の数から輸出入の状況が明らかになります。石油タンクの浮き屋根の沈み具合を見れば原油の備蓄量もわかる。政府統計が出る前に経済指標を予測できます。未来を知るためなら誰でもお金を出しますからね。

 まずはエンドユーザー候補の企業と組んで先行事例をつくろうとしています。マーケットをつくるのには時間がかかります。衛星画像販売ビジネスで一定の売り上げを獲得しながら、一方でアプリケーションを提供するビジネスを育てていきたい。我々は全世界の毎日の観測データを提供するデータプラットフォーマー。いろいろな業界の人が、そのデータを使ってビジネスをする「BtoBtoB」或いは「BtoBtoC」的なビジネスを目指しています。

 言ってみれば、我々が目指すのは“宇宙ビジネスにおけるアップル”のような存在です。アップルは「iPhone」と「iOS」、ベースとなるソフトをつくっています。そのプラットフォームの上でたくさんのアプリ開発者が、独自のサービスをつくってエンドユーザーに販売しています。私たちの50基の超小型衛星群はiPhone。iOSに相当するのがデータプラットフォーム。様々な事業者が宇宙から得たデータに付加価値をつけて販売してほしい。こういうエコシステムを宇宙ビジネスにおいてつくっていきたいと思っています。

チャンスをしっかりつかみ、未来を変えていく

最後に新しい分野を切り開くパイオニアとして、ビジネスパーソンにメッセージがあればお願いします。

中村:思い返せば、私が今、こうしてアクセルスペースで宇宙ビジネスに取り組むことができているのは、幾つものラッキーが重なったからです。たまたま大学で手作り人工衛星プロジェクトに挑戦している先生と出会った。そして、たまたま大学院を修了する時に先生がJSTの助成金を受けて起業ができた。さらに、たまたまウェザーニューズと出会ってお客様第1号になってもらえた。たまたま宇宙ビジネスにバックグラウンドのある投資家の人と出会って支援してもらえた…。本当にラッキーが続いています。けれど、実はチャンスって誰にも平等に訪れているものではないでしょうか。大事なのはアンテナを高く張り、そのチャンスを確実につかんでアクションを起こすことだと思います。

 私自身、これからも、やって来たチャンスをしっかりつかみ、アクションを起こし、未来を変えていきたいと思っています。(了)

アクセルスペース・中村友哉 代表取締役も登場
InovatorNext 未来を創る東大工学部

 東京大学工学部・大学院工学系研究科は、社会の複雑な課題を解決し、変革をもたらし、未来を切り拓くイノベーターたちを輩出し続けています。
 なぜ、それが可能なのか。日本を代表する企業の経営者、先進的な分野に挑む起業家、存在感が増し続けている女子学生・卒業生など、卒業生や学生へのインタビューによって、その秘密に迫るとともに、全16学科が取り組む具体的な研究・教育の特長をわかりやすく紹介します。

日経BP社(著)/東京大学 大学院工学系研究科・工学部 広報室(監修)/1080円(税込)