「衛星を売る」のではなく「データを売る」

アクセルスペースの超小型衛星で撮影した世界の絶景。(アクセルスペースのウェブページから)

そういう状況はこれからも簡単には変わりそうもありませんが、超小型衛星のビジネスを営むアクセルスペースはどう対処しているのですか。

中村:方向転換しました。当初、思い描いていたような、企業向けに超小型衛星を設計開発するビジネスではなく、衛星から得たデータを企業に使ってもらうビジネスへとビジネスモデルを変更したのです。もちろん、データを得るためには衛星をつくり、打ち上げなくてはなりません。お客様が衛星を所有するリスクを取るのが難しいのなら、自分たちでそのリスクを取ろうと考えています。自分たちで開発した超小型衛星を自分たちで持つのです。

大企業ですら尻込みするようなリスクを自分たちで取るというのは相当に大胆な意思決定です。

中村:当初、想定していた超小型衛星の設計開発ビジネスでも、1年に1社ぐらい受注しながら生き残ることはできたと思います。けれど、それが今後何百社、何千社と続くとは考えにくい。衛星の設計開発ビジネス依存のままでは限界があります。

 そもそも私がアクセルスペースを創業したのは、科学技術や安全保障の用途に限定されていた宇宙の価値をもっと社会に広げたい、宇宙利用をもっと当たり前のものにしたいという思いがあったからです。1年に1基の衛星をつくるだけでは、ごく限られた人にしか、その価値を提供できません。1人でも多くの人に宇宙を利用してもらうには、衛星から得たデータを提供する方法が適していました。

 これまで日本が打ち上げてきた大型衛星は技術実証などが主な目的。民間企業が衛星画像を欲しいと思っても簡単に手に入れることはできませんでした。海外から買おうとすれば1枚当たり100万円近くかかってしまいます。現実的に衛星画像をビジネスに利用するのは難しかった。我々はそういう宇宙のハードルを下げ、誰でも日常的に宇宙の価値を活用できるようにしたいと考えています。

暮らしや生活に直結するデータが得られる

衛星から得たデータを企業に使ってもらうという新たなビジネスモデルは、どのような仕組みで実現するのですか。

中村:今、進めているのが「AxelGlobe(アクセルグローブ)計画」です。2022年までに60~80cm立方の超小型衛星50基を打ち上げ、この衛星群で毎日、全地球を観測し、その宇宙ビッグデータを蓄積して企業に提供しようとしています。

 100基つくっても大型衛星1基分のコストで済む超小型衛星のメリットを生かし、「数」で勝負します。地球観測において、数を生かすということは観測頻度を高めること。大型の衛星1基を打ち上げた時の観測頻度は1~2週間に1回程度ですが、超小型衛星を50基打ち上げれば、1日1回、全世界を観測することが可能です。日々、データを更新する中で、私たちの暮らしや生活に直結するデータも得ることができます。