オーストラリアのシドニーやメルボルンで展開するモダン和食店「Sakë」のエグゼクティブシェフを経て、現在、プレスランドさんは2017年3月メルボルンにオープンする新しい日本料理店のシェフとして、その準備を進めている。1つの建物にフロアごとにコンセプトを変えた店が入る予定で、おまかせ寿司や高級会席料理なども提供。新しい挑戦に向け、胸を高鳴らせている。

偶然から始めた日本料理の仕事
美しい料理を通してお客に思いを伝える

ソンクラーン・コムニューさん(タイ)
ソンクラーン・コムニューさん(タイ)

 タイ東北部イサーン地方出身のソンクラーン・コムニューさん。親戚を頼ってバンコクの寿司店に勤めることになったのが、和食との出会いだった。その店で3年勤めた後、寿司以外の和食の世界も知りたいと、つてをたどって1998年オープンのバンコクでは老舗の和食店「大阪料理 菜の花」に働き口を得た。約11 年前のことだ。

 季節の食材が豊富で、四季を料理で表現したり、季節折々の行事の料理があったりすること。また、盛り付けが美しく健康的な料理であることが、コムニューさんが日本の料理に惹かれた理由だ。細心の注意を払った丁寧な仕事が必要とされることにも、心を打たれた。

 「菜の花」で働き始めた時は、カウンターで寿司やお造りのみを担当していたが、今は調理場で煮炊き物なども手がけるようになった。「タイの人はのんびりとした国民性のためか、一般的に段取りが不得意。でもコムニューさんは、冷蔵庫の中を見たら、ひと目で今日は、どんな仕込みをしなければいけないのかなどが分かる」と、同店の主人である井崎弘さんは彼を評価する。タイ人の若手料理人にも指導ができる、井崎さんにとって貴重な人材だ。

 井崎さんは常々、タイ人の料理人に「料理は自分の作品だと思って作れ」と伝えているという。「自分の作品」だと思ったら、いい加減な仕事はできない。もっとおいしく、もっときれいに見せたいと、料理人の思いが変わってくると考えているからだ。そうした教えを叩き込まれてきたコムニューさんは、「料理、器ともに美しい和食は、料理人の思いをお客様に伝えやすい」とこれを作る喜びを語る。

「『蓮根菊花まんじゅう』磯辺あんかけ」
「『蓮根菊花まんじゅう』磯辺あんかけ」

 「和食ワールドチャレンジ 2016」出品料理は、「『蓮根菊花まんじゅう』磯辺あんかけ」。レンコンと山芋を合わせて作った、もっちりとした食感のレンコンまんじゅうにサラミを仕込み、菊の花びらをまぶして揚げた一品。吉野葛でとろみを付けた海苔を使ったあんの上にレンコンまんじゅうを載せ提供、黄色と黒い海苔あんの色のコントラストが美しい料理に仕上げた。井崎さんからアドバイスを受けながら完成させたこのメニュー。現在、「菜の花」でも提供をはじめ、日本人客にも評判だという。

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