今回のコンテストで初めて日本を訪れるウィジェクーンさんは、この機会に和食の知識を深めたいと意欲を燃やす一方で、「スリランカが好きだから」と、ほかの国で働くよりもあくまで母国で日本料理を広めていきたいと考えている。「スリランカにまだ紹介されていない本物の日本料理を紹介し、スリランカ人の好みに合った新しい和食をベースとした料理も考案していきたい」と言う。

ジャパニーズポップスの向こうに見えた和食文化
古くて新しい江戸時代の調味料「煎り酒」を使う

ネオ・グオ・キンさん(シンガポール)
ネオ・グオ・キンさん(シンガポール)

 ネオ・グオ・キンさんの青春時代、シンガポールではジャパニーズポップスが流行っていた。和食に興味を引かれたのは、ジャパニーズポップスの背景にある日本文化をもっと知りたいと思ったからだ。小さなカフェを営む両親を手伝いながら成長したネオさんにとって、学校卒業後に料理を仕事とするのはごく自然なことだった。そして、最初に彼が門を叩いたのは、日本料理店だった。

 海外で和食の人気が高まっている大きな理由のひとつは「健康的な料理」であること。ネオさんは和食が健康的であるのは、新鮮な季節の食材を使うことに加え、その材料を選んだわけを突き詰めるからだと考えている。ただ見た目や味が良いだけはなく、栄養価も考慮する。そうした姿勢が「ほかの料理にない価値を生み出している」と話す。

 料理人としての道を歩み始めた頃は、ほかの国の料理も学んでみたいと、いくつかの和食店で働いた後、韓国料理店の立ち上げに関わったり、中国料理店で経験を積んだりした。しかし、しばらくすると、そうした料理は調味料を使い過ぎていると感じ、再び和食店で仕事をするようになった。「和食の出汁は、とても澄んでいて簡潔でしょう?」とネオさんは言う。

 知ろうとすればするほど和食の世界は奥深く、「日本料理を学び始めてから随分と経つけれど、まだまだ初めて見る材料がある」とネオさん。一つひとつの知識を着実に自分の力としていくため、今は、和食の季節感を学ぶことに力を注いでいる。また、現在勤める日本料理店「ファット・カウ」では、和牛を使った料理に力を入れているため、和牛について勉強しているという。

 実は、ネオさんは昨年開催された「和食ワールドチャレンジ 2015」でもファイナリストとして残り、来日している。その際に食べたかつ丼やラーメンは、見た目はシンガポールのものに似ているのに、まったく別の味がしたそうだ。たくさんの種類のカツオや昆布が手に入ることにも驚いた。いずれも、シンガポールには1、2種類しかないからだ。「母国でも、こうした食材を使って料理がしたい」――。和食への思いはさらに高まった。

「寒ブリのたたきと冬の煎り酒」
「寒ブリのたたきと冬の煎り酒」

 今回の大会はいわば前回のリベンジ戦。出品料理は「寒ブリのたたきと冬の煎り酒」だ。脂がたっぷりのった寒ブリと甘みのあるレンコン、カブ、春菊といった冬野菜を、江戸時代によく用いられた調味料である煎り酒でまとめた。勤務する店の日本人料理長に教えてもらったというこの煎り酒が、この料理の一番のポイント。日本でも近年になって注目されるようになってきた煎り酒だが、和食らしい、簡潔な料理に見えるよう心配りをするなかで、「一見、シンプルだけれど強い味わいのあるこの調味料が、全体をうまくまとめてくれると思った」と話す。

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