しかし、安倍晋三首相はこうした解決策とは全く異なるアプローチを取り、日本と米国のほか太平洋を囲む10カ国との貿易協定であるTPP(環太平洋経済連携協定)を支持している。

安倍首相はTPP推進が改革をもたらすと考えているようだが…
(写真=Imaginechina/アフロ)

 安倍首相は、TPPは国内で必要とされる農業改革を推進する力になると考えている(興味深いことに、米国ではTPPが米国のひどくゆがんだ農業政策の是正に役立つと考える者はいない)。

 だが、実際には農業改革が日本のGDPに及ぼす影響は軽微だ。理由は単純で、農業のGDPに占める割合が非常に小さいからだ。それでも、改革はやはり望ましく、日本の若者が創意を発揮できる舞台を増やすことにつながる(もっともTPPがそうした創意工夫をもたらすための最善の策と言うつもりはない)。

日本は世界を先導できる

 一方、女性の全面的かつ平等な労働参加を推進しようという安倍首相の政策は正しい。こうした政策は、うまくいけば、生産性と経済成長の両方を一気に押し上げるはずだ。

 日本は、四半世紀に及ぶ停滞を経てもなお、世界第3の経済大国だ。日本が国民の生活水準を高める力となり得る政策を取るなら、他国の需要と成長も喚起することになる。

 これに劣らず重要なのが、以下の点だ。日本はこれまで革新的な商品や技術を開発し、それを世界と共有してきた。同様に、日本が何らかの政策で成功を収め、最終的にそれを輸出すれば、ほかの先進国も同じ、または似たやり方で国民の生活水準を向上させることができるだろう。

国内独占掲載:Joseph E. Stiglitz © Project Syndicate

(日経ビジネス2016年9月26日号より転載)