部品メーカーへの納入開始

 日本製鋼所も、主流のマグネシウム加工法である鋳造とは距離を置き、独自路線を貫いてきたメーカーだ。米ダウ・ケミカルからの技術導入を受け、融解した金属を金型に打ち出す射出成型の一種「チクソモールディング」の開発に特化してきた。

 マグネシウムは溶融時に空気と触れると激しく燃焼するため、炉内を難燃性のガスで覆う必要がある。これが加工コストを上げる一因になっている。チクソモールディングはマグネシウムのチップをヒーターで半融解状態にして射出する。空気には触れないため、ガスが不要だ。

 日本製鋼所は今夏、9年ぶりに新たな射出成型機を開発。自動車部品メーカーへの納入を始めた。新型成型機は従来品より全長で2割大型化。これまでメーターケースなど1kgほどの小型部品しか成型できなかったが、エンジンのヘッドカバーなど2~3kgの大型部品も作れるようになった。大量のマグネシウムチップを半融解状態にできるよう、ヒーターなどに改良を加えたという。

 同社MG設計グループの梶川浩マネージャーは「鉄鋼メーカーが強い日本ではハイテン(高張力鋼板)への信頼が根強いが、欧州の自動車メーカーからチクソの問い合わせが増えている」と話す。

 加工法だけでなく、新たな特性を持つ合金の研究も進んでいる。長岡技術科学大学の高性能マグネシウム工学研究センターが住友電工などと共同開発しているのが、AZ91に代わる汎用合金AX系だ。

 Xはカルシウムの略号。元来カルシウムは難燃性を付加するための添加剤だったが、「時効処理」と呼ばれる加工後の熱処理を施すことで、強度を大幅に上げられる特性が出ることも判明した。

 このため、添加物を減らしても強度を維持できるようになる。添加物により生じる不均一なひずみを減らして、加工速度を上げることが可能だ。

 例えば自動車ボディー向けに開発した「AX0503」はアルミニウムが0.5%、カルシウムが0.3%しか含まれていない。「押出加工の速度はAZ91の10倍」と鎌土重晴・同センター長は胸を張る。

 2020年以降の燃費規制を見越して進むマグネシウムの技術開発。関係者は「レクサス級の高級車までならコストを吸収できるめどは立った」と口をそろえる。炭素繊維と同様、性能の高さは認知されつつ、自動車への本格適用が見送られてきたマグネシウム。コストの低い腐食対策の開発など課題はまだ多いものの、明るい兆しは見えてきた。

(日経ビジネス2016年9月26日号より転載)