外装向け圧延機も視野に

現在主流のマグネシウム合金「AZ91」(下)の組成を見直し、カルシウムを添加することで加工性を向上した

 マグネシウムの板材での独自技術を持つのが住友電気工業だ。住友電工は今年度から、マグネシウム合金「AZ91」の板材の販路を自動車の構造材や大型部品に広げていく方針を立て、技術開発を進めている。

 AZ91は耐食性を高めるためにアルミを9%、亜鉛を1%加える。アルミ合金並みに腐食を抑えられる最も汎用的なマグネシウム合金だ。ただし、マグネシウムとアルミの化合物が不均一に析出するため割れやすく、圧延して板材にするのが難しい。主に鋳造品に利用されてきた。

 住友電工は2010年、AZ91の圧延時に急冷して化合物を均一に析出させることに世界で初めて成功し、特許を取得。「いまだにAZ91の板材はうちの独占市場。ほかのマグネシウム合金の板材と比べ、腐食防止のための表面処理のコストが低くなる」(マグネシウム合金開発部の河部望次長)という。

 従来、AZ91板材の主な用途はパソコンの筐体だった。自動車の構造材などに販路を広げるため、このほどAZ91を使ったシートやインパネのフレームの試作品を開発。鉄製の部品と比べ、強度を確保しつつ重量を半減させたという。

 試作品のポイントとなったのは、板材を容器状に成型する絞り加工。最適な加工温度を見つけることで、破断せずに加工できる深さを示す限界絞り比は「アルミニウム合金を超えることができた」(河部次長)。

 さらに2枚の板の継ぎ目でピンを高速回転させて摩擦熱でくっつける「FSW」と呼ばれる接合方法をAZ91に適用。ピンの回転速度などの加工条件を最適化し、接合部でも板材の80%を超える引っ張り強度を実現した。

 現在、住友電工はパソコン筐体向けに50cm前後の幅の板材を作る圧延機を有しているが、自動車の外装部材を生産するため、1.5m幅の板材を作れる圧延機の開発も検討しているという。