中高年の悩みの種である薄毛を根治させる再生医療の実用化が見えてきた。髪の毛を作る工場である「毛包」から細胞を取り出し、シャーレで培養して移植する。規制緩和で民間企業の参入が可能になったことで、研究に弾みがつく。

(日経ビジネス2017年9月11日号より転載)

薄毛・脱毛は「毛包」が小さくなった状態
●薄毛のメカニズムと毛髪再生医療のコンセプト
体内から取り出した細胞を培養して脱毛部分に移植する。もともとある毛包を活性化したり、新たに毛包を増やしたりして、太い毛髪を生やす(写真=アフロ)

 年のせいだから仕方ない──。毎朝、鏡を見て、薄くなっていく頭髪に嘆息する中高年男性は少なくないだろう。近い将来、そんな薄毛を最先端のバイオ技術で治せる日が来るかもしれない。

 加齢に伴って起きる一般的な薄毛は、医学的には「壮年性脱毛症」と呼ばれる。前額部(生え際)や頭頂部の毛髪が産毛のようにごく細く柔らかくなり、地肌が見えてしまう状態だ。発症するかどうかや薄毛になる部位などは、遺伝子で決まると考えられている。平均すると、成人男性の3人に1人が壮年性脱毛症による薄毛に悩んでいるという。

 人の頭部には、およそ10万本の毛髪が生えている。頭皮の内側には「毛包」という器官があり、毛髪を作る工場として働いている。基本的に1つの毛包から1本の毛髪が作られる。この毛包に、毛髪再生医療のカギがある。

 毛髪は際限なく伸び続けるわけではない。これは、毛包という工場が“稼働”と“休止”を繰り返しているためだ。具体的には、①毛髪がぐんぐん伸びる成長期(約2~6年)②毛髪の伸長が止まり、毛包が小さくなっていく退行期(約2週間)③古い毛髪が抜け、毛包の奥で新しい毛髪が作られ始める休止期(約2~3カ月)──というサイクルを繰り返している。