ちなみにこのモジュラーコンポーネントは、広義ではプラットフォームの一部と捉えられているものだ。フォルクスワーゲングループでは2012年にFF、4WD車用の「MQB」を現行VWゴルフに投入して以来、今年登場したアウディA4に、縦置きエンジン用の「MLB Evo」を採用。これはA5やQ5、Q7などいわゆるDセグメントのモデルが対象となる。そして新型パナメーラにはじまる「MSB」を用いて今後は新型ベントレーコンチネンタルGTなどが開発される予定となっている。

 ボディショップのアンダーボディ(骨格部分)を作る工程では、人の姿はまったく見られない。整然としたクリーンなラインで黙々とロボットがボディを組み立てていくさまはある種異様にも思えた。近年ドイツでは、官民が一体となって「インダストリー4.0」と呼ばれるいわゆる第4次産業革命が進められてきた。これは単なる生産工程の自動化を目的としたものではなく、デジタル化のレベルを大幅に進化させコストの最大効率化、スマート化を目指したものだ。

 ボディショップのIT責任者によると、「クラウドなどを用いたデータの一貫性、自己管理、自己最適化など、“自ら考える”工場として機能するデジタルエンジニアリングが今後のポルシェ製造システムの柱であり、まだ稼働をはじめたばかりだが、現在データの一貫性に関しては、はすでに目標の4分の3レベルに到達している」と話していた。

自ら発見し、修正を試みる

 すこし解説が必要だろう。“自ら考える工場”とは、具体的に言えば、品質管理上のエラーが発生した場合、たとえばあるパーツが規定通りに取り付けられなかった場合、機器は自動的に停止し、再度組み付けを行うか、あるいはそのパーツを排除して、同じ新しいパーツで作業を続行する、そういったところまで、人の手や指示を介さないで行うようなイメージだ。

 データ管理については、例えばエンジンのトラッキングやトレーサビリティといった機能は日本のメーカーでもすでに採用しているものだが、ここではより多くのデータを中央コントロールシステムに集約していくという。サプライヤーから送られてくる部品を含め、すべてがクラウドによって管理され、目の前で動いているロボットのアームは、パーツ1つを1つをスキャンし整合性をとった上で取り付けを行っているという。ボディショップ、ペイントショップ、アッセンブリーなど、すべてのデータは結合され、パーツ情報や使われた技術が記録されていく。1台1台の車両について、すべてのデータを一元管理することで、同一のラインで様々なカスタム仕様の車両が流れていく。トラブルが発生した際の原因追及もスムーズになる。

フロント、リア、フロアパンを組み合わせるとアンダーボディになる。鉄とアルミ部材を組み合わせるため溶接技術は使えず、1台あたりに使用される接着剤の総延長は216mにも及ぶ。さらにアンダーボディにサイドパネルを組みあわせていく工程では、高速でボルトを回転することで材料を熱して異なる素材をくっつけるフロー・ドリル・ボルト(FDSボルト)や、また異素材を結合可能な空洞のセミチューブリベットなどが使われる。
フロント、リア、フロアパンを組み合わせるとアンダーボディになる。鉄とアルミ部材を組み合わせるため溶接技術は使えず、1台あたりに使用される接着剤の総延長は216mにも及ぶ。さらにアンダーボディにサイドパネルを組みあわせていく工程では、高速でボルトを回転することで材料を熱して異なる素材をくっつけるフロー・ドリル・ボルト(FDSボルト)や、また異素材を結合可能な空洞のセミチューブリベットなどが使われる。

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