山道や林道を走るトレイルランニング(トレラン)は欧米で広まり、日本でも10年ほど前から人気が高まっている。プロのトレイルランナーでサロモン昭島アウトドアヴィレッジ店に勤務する小川壮太氏によると、「ロードランニングや登山の経験者が多く、40、50代の男性、30代の女性の増加が目立つ」という。
トレランの魅力は、非日常的な自然を満喫する爽快感や、コースや天気などを見ながら戦略(計画)を立てて臨む楽しさなど。「経験が役立つスポーツ」(小川氏)でもあり、これも中高年層に人気が高い理由だそうだ。
上り方
後ろ脚で地面を押した際の反発力で重心を前に移す。「上」ではなく「前」への意識で。膝を曲げすぎないように(イラスト=村林 タカノブ)
楽しむコツは、疲労を防ぎ、いかに効率的に移動するか。上り坂(ヒルクライム)では、視線を真正面よりやや斜め下に落とし、後ろ脚で地面を押した際の反発力で重心を前に移動させるようなイメージで走る。着地した際に膝を曲げすぎると、伸ばした時に上方向へのムダな労力が加わり、疲れやすくなる。急勾配の坂は歩幅を狭めてテンポ良くピッチを刻み、なだらかな坂は歩幅を少し広げる。「背筋や臀部、大腿後部といった大きな筋群を使うのが、疲れにくく効率的な歩き方。胸を開くように意識すれば骨盤が前傾し、大きな筋群を使いやすくなる」(小川氏)。トレランの場合、全コースを走り切る必要はない。ランの中に「歩き」を上手に入れることも大切だ。
下り坂(ダウンヒル)は、恐怖心から猫背になりがち。腰が引けて後傾姿勢になると滑って尻もちをつきやすくなり、大腿前部にも負担がかかって疲れが増す。ポイントは、顔を上げて胸を開くこと。すると、骨盤が前傾して体の真下でバランス良く着地できるようになり、ブレーキをかけずにリズミカルに下れる。かかと着地は足首をひねりやすいので、足裏全体で着地するように心がける。両腕は前後に振るのではなく、左右に広げて上げれば、体のバランスを取りやすく、下りやすい。
下り方
胸を開くと骨盤が前傾し、へっぴり腰による尻もちを防げる。体の真下で着地すれば安定してリズミカルに下れる(左)
体の軸を保ち、足裏全体で着地する。視線を斜め前方に向ければ、猫背になるのを防げ、視野も確保しやすい(右)(イラスト=村林 タカノブ)
また、軽量で折り畳めるトレラン用のトレッキングポール(杖)を使えば体がブレにくくなって安定する。膝にかかる負担を軽減でき、併せて体力の消耗を抑えられる。
トレランに必要となるアイテムは、経験者のスタッフがいる専門店で選ぶようにしたい。専用のシューズやバックパック(リュック)のほか、雨具などの防寒着も必要になる。「トレラン講習会に参加し、基本的な技術を学ぶのもお勧め。登山者(ハイカー)の邪魔にならないようにマナーも意識して安全に楽しんでほしい」(小川氏)。
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