金属芯材に電極を「塗布」

有機系の変換効率はまだ低い
●主な太陽電池の変換効率
有機系の変換効率は現状ではまだシリコンに追いついていない
出所:米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)
流通量の多いシリコン、今後は有機系に期待
●太陽電池の種類系統
太陽電池は使う素材によって分類できる。最も普及しているのが結晶タイプのシリコン系。市場の9割を占めるといわれる
開発が進む有機系の太陽電池。薄く柔軟性がある作りにできるのが特徴だ

 上図のように、太陽電池は利用する素材から複数の方式に分かれる。中でも注目が集まっているのが「有機薄膜系」だ。半導体としての性質を持った有機材料を何層にも塗布して製造する。使う材料によっては軽く、曲げられるという利点がある。既存の印刷技術などを応用して作れるため、将来的にはシリコン系より安く製造できるようになると見込まれている。

 住江織物が開発した繊維は、有機薄膜系太陽電池の一種だ。マイナス極となる金属製の芯材の周りに、表面の電気状態を整える1層目の素材を塗布。その外側に「活性層」と呼ばれる発電部分、さらにプラス極となる「透明電極層」を塗り重ねる。最後に感電防止用の被覆層を塗れば完成だ。

 光が活性層に当たると発電が始まり、芯材と電極層を通じて電気が流れる仕組みだ。出来上がった糸の太さは0.25mm。髪の毛2本分に相当する。独特の光沢があり、細い金属糸のようだ。

 「有機材料溶液を均一に塗布するのが難しかった。溶液の表面張力を使う方法を開発し、金属製の芯材を溶液から引き上げる速度も工夫した」と、住江織物技術・生産本部の源中修一テクニカルセンター長は話す。開発に着手したのは2011年で、5年近く試行錯誤を続けたという。

 室内照明下での発電量は10平方センチメートルで150マイクロワット(マイクロは100万分の1)。一般的な太陽電池に比べると微弱だが、小型のセンサーを稼働させるなどの用途に使えそうだ。シリコン系太陽電池と比べ、蛍光灯やLED(発光ダイオード)照明などの光を効率的にエネルギーに変えられる利点もあるという。住江織物はまず、自社製のカーテンなどに織り込むことを検討している。「昼間は太陽光を、夜間は室内からの光を取り込むことで一日中発電できる」と源中氏は話す。新素材の開発などを進め、2019年の量産化を目指す。

 カーテンではなく、「窓」に貼り付ける太陽電池の開発を進めるのが三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱化学だ。同社は2015年、透明なフィルムに有機材料を塗布した「シースルー発電フィルム」を開発。オフィスビルなどでの実用化を目指し、既に市場開拓を開始している。

 光の透過性は変換効率とトレードオフの関係にあり、向こうが透けて見える太陽電池を作るのは難しい。三菱化学は独自開発した有機材料を薄く、均一に塗布する際に、光ディスクの製造技術を応用した。2016年には変換効率を6%まで高めたという。

 軽さも特徴だ。1平方メートル当たりの重さは0.4kg以下と、結晶シリコンを使った太陽電池と比べて50分の1に抑えた。曲げられるという特徴を生かし、今後はビルだけでなくクルマの窓への装着も検討する。

2030年には6兆円市場に

 富士経済によると、2014年に約3兆8000億円だった太陽電池モジュールの世界市場は、2030年には約6兆1000億円に拡大する見通しだ。現在は市場の9割超をシリコン系が占めるが、今後は有機系のシェアが高まることが確実視されている。

 いつも持ち運ぶかばんから、住居やオフィスビルの窓まで、あらゆる場所で太陽光発電が可能になる時代がすぐそこまできている。

(日経ビジネス2016年5月16日号より転載)