現在、日本では博報堂グループのクオンタムや孫泰蔵氏がCEOを務めるミスルトウ、ビーノスなどがスタートアップスタジオを運営しており、2016年11月には独立系VCのANRI代表パートナー佐俣アンリ氏らがシード(SEEED)というスタジオ型の起業支援プロジェクトを始めてもいる。

 2018年にはオール・タートルズが本格稼働するなど、徐々に増えてはきたものの、VCやアクセラレーターに比べれば絶対数が少ないと言わざるを得ない。

 その要因として、スタジオ型の起業支援が誕生してまだ日が浅いことのほか、収益モデルが発展途上である点が挙げられる。

 事業開発のプロを自社で抱えるスタートアップスタジオは、他の起業支援業よりも人件費やオフィス代などのコストがかさむ。それゆえ、創業者の私財以外にVCや個人投資家、大企業からの出資で運営資金を工面しなければならず、中には受託開発を設立当初の資金源にするスタジオもあるという。

 これらの資金を使って新規事業を量産し、その中で大きく成長したスタートアップの株式や売り上げの一部をリターンとして受け取る、というのが理想的な収益モデルだが、先に元手が尽きてしまうリスクは拭えない。

 また、商業的に大きなインパクトを残すスタートアップか、社会課題を解消するような極めてイノベーティブなテクノロジー製品を輩出した実績がないと、VCなどから出資を受けるのも難しい。

 書籍『STARTUP STUDIO』の中でも、米フロリダ州タンパでライコスというスタートアップスタジオを立ち上げたものの、この地域の投資家たちにスタジオへ投資するメリットを理解してもらえず、資金難で運営を中止したというケースが紹介されている。

 日本にスタートアップを増やし、定着させるには、結局のところライコスを反面教師にスタジオ発の成功事例を生み続けるしかないだろう。

 そのために今、行動を起こしてほしい人物像を、リービン氏は3つのタイプに分けて説明していた。

「世界が求めているのは楽観主義者だ」

 最初に挙げたのは、リービン氏と同じように起業経験が豊富な人物。次は、スタジオのような複数の事業を手掛ける環境で働きたいというエンジニアとデザイナー。最後が特定の職務で豊富な経験を持つシニアなビジネスパーソンだ。

 「自分にはまだ『これだ!』と思えることがないという人も歓迎です。やりたいことはスタジオの中で見つけてくれればいい。とにかく問題解決そのものに情熱を持って動く人たちにスタートアップスタジオを興してほしいと思います」

 講演の終わりに、リービン氏は聴講者に向かって「世界が求めているのは楽観主義者だ」と話しかけた。今を憂うくらいなら、未来を変えるために動き出そうというメッセージだ。

 その活動の場として、スタートアップスタジオは重要な選択肢になれるか。オール・タートルズのような先行するスタジオから運営ノウハウを学ぶのも大事だが、今後は一人一人の行動にかかっていると言えるだろう。

全世界で増殖するスタートアップスタジオの今がわかる

 書籍『STARTUP STUDIO』は、ハンガリーでスタートアップスタジオを運営する著者が世界50以上の「新事業を創る共同体」を調査して執筆した解説書だ。

 屈指の成功例とされる米ベータワークスの事例紹介から、欧州や中南米の各地で生まれたスタジオの運営ノウハウ、新規事業を量産するためのプロセスまで、詳細にまとまっている。

 大企業との連携を主目的にした「コーポレート・スタートアップスタジオ」のような派生形のビジネスモデルも説明してあり、スタジオを興すこと、または参画を検討したい起業志望者や企業人には参考になるはずだ。

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