主なポイントは3つ。1つ目は、エンジニアやデザイナーの優秀さにある。

 「日本人クリエーターの多くは良い意味でオタク性を持っているというか、細かなところまで目を配り、そのことにプライドを持って仕事に取り組みます。さらに、素晴らしい職業倫理も持ち合わせている。だから優れたテクノロジー製品を生んできたのだと考えています」

 他方、シリコンバレーに集う人たちは「会社」をたくさん作るのが得意で、それを商業面で成功に導くのも得意だとリービン氏は説明する。スタートアップを立ち上げ、投資家から巨額の資金を調達し、それを元手に組織拡大と製品の普及を一気に進めることで世界を席巻してきた。

 しかし、リービン氏はこの日、「シリコンバレーのスタートアップ・エコシステム(起業家を育む環境、生態系のこと)はすでに破綻している」とも述べていた。

 その理由は、2017年5月、リービン氏に行った独占インタビュー(独白「僕がエバーノートCEOを辞めた理由」)に詳しい。全容はこの記事に譲るとして、破綻の要因の一つに、投資を得るためにエンジニアやデザイナーがCEOになることを強要される環境があるという。

 結果、製品を作り育てること以外の業務に忙殺され、失敗してしまうのだ。

 「私の知る限り、スタートアップを立ち上げたばかりのCEOは自分の時間の100%を資金調達に費やします。無事に調達できたとしても、その後は契約、法務、HR(人材採用や組織人事)など経営全般について学ばなければなりません。これらがうまくできず、つまずいてしまう人が非常に多いのです」

 そこでスタジオがCEO業務を代行・サポートすることで、リスクを減らすことができるとリービン氏は続ける。これが2つ目のポイントだ。

 「プロダクト・ファウンダー(製品創業者)は、スタートアップのCEOと違ってお金集めが苦手でも大丈夫。スタジオに参画すれば、そもそも起業しなくてもいいのですから」

 例えばオール・タートルズは、日本展開のパートナーであるデジタルガレージのほか、米セールスフォース・ベンチャーズ、米ゼネラル・カタリスト・パートナーズといったVC、楽天会長兼社長の三木谷浩史氏のような個人投資家から計2000万ドル(約22億7000万円)以上の出資を受けており、これを運営資金にプロダクト・ファウンダーを支援している。

 「オール・タートルズに出資する人たちのほとんどは、自分自身がテクノロジー起業家であり、これまでの起業プロセスが非効率だったのを知っています。だから、CEOではなくプロダクト・ファウンダーを増やすことでイノベーションを加速させるという我々のビジョンに共感してくれました。技術力に長けた日本人が製品づくりに没頭できるなら、(シリコンバレーに比べても)一日の長があるはずだ、とね」

失敗が資産になる仕組みがあれば、挑戦する人が増える

 とはいえ、ハリウッド映画がそうであるように、新しい事業を量産していく過程では商業的に失敗する事業も出てくるものだ。スタートアップスタジオでも、一定期間で開発・育成した結果うまくいかなかった事業には撤退が言い渡される。

 オール・タートルズの場合、1つの事業に対して18カ月間のプログラムを組んで支援し、プログラムが終わったタイミングで4種類の選択をするという。

(1)スタートアップとして独立させる。
(2)大企業に買収してもらう。
(3)スタジオ内の事業部にして運営する。
(4)事業撤退して支援を中止する。