最も大きな違いは、事業アイデアを持つ個人や企業に対して、スタジオのスタッフが開発、販売、普及まで一連のプロセスをハンズオンで支援する点だ。

 書籍『STARTUP STUDIO』では、スタジオが抱える自社スタッフを「リーダーシップチーム」と「コアチーム」の2つに分けて説明している。

 リーダーシップチームとはスタジオの共同創業者のことで、ほとんどの場合は「ベテランの起業家、すなわち過去に何かしらの事業を成功させ、イグジット(注)を経験したことのある人たち」であるという。オール・タートルズにおけるリービン氏も、このケースに当てはまる。

注:イグジット(EXIT)とは、起業した創業者やそのスタートアップに投資したベンチャーキャピタルなどが投資した資金を回収することを指す。その方法としては、IPO(株式市場に上場)して保有株を売却したり、大企業に自社や保有株を売却(バイアウト)したりすることが挙げられる。

 リーダーシップチームの面々は、スタジオへの参画を希望する個人や企業が持っている事業アイデアを精査し、どれをどう支援していくか、またはどれを支援しないのかを決める(一定期間で成長できなかった事業に対する支援を中止することも含む)。

 そして支援内容を決めた後は、コアチームと呼ばれる開発、デザイン、マーケティング、営業、法務、総務など「スタートアップが必要とするすべての機能」に精通した専門家集団が、スタジオ参画者らと一緒に新規事業を量産していくのだ。

 得意分野や抱える人材の質はスタジオによって異なるものの、このような仕組みがあることで、支援対象は起業家だけでなく大企業の新規事業担当者や大学関係者まで広範囲に及ぶ(下図参照)。

出典:書籍『STARTUP STUDIO』(イラスト:岡田丈)

 これは、脚本や撮影、キャスティングなどさまざまなプロフェッショナルが集結して世界的大作を製作し続けるハリウッドの映画スタジオに似ている。リービン氏がオール・タートルズをCGアニメーション映画の『トイ・ストーリー』シリーズなどで知られる米ピクサー・アニメーション・スタジオに例えたのも、この特徴ゆえだ。

 「我々が目指すのは、ピクサーや日本のジブリのような存在です。これらのスタジオには優秀な専門スタッフが数多く集まり、私たちを魅了する映画作品をいくつも生み出してきました。この事業モデルをテクノロジー産業で展開するのがスタートアップスタジオです」

CEOより「プロダクト・ファウンダー」を増やす

 2017年5月に米サンフランシスコで産声を上げたオール・タートルズは現在、東京と仏パリにも人工知能領域に特化したスタートアップスタジオを開設するべく準備を進めている。日本では2018年1月から本格稼働する予定で、今は個人・法人を問わず参画を希望する人を募集中だ。

 リービン氏が日本に注目したのは、大の親日家であること以外にも理由がある。純粋に、ビジネスとして勝算が見込めるからだ。