「技術立国」──。かつてそう呼ばれていた日本。自動車や精密機器などのメーカーは、その技術力の高さ、品質の良さで今も世界の尊敬を集めている。

 しかし、産業全体の勢いを見れば、現在の日本は諸外国の後塵を拝していると認めざるを得ない。

 例えば世界の家電市場は、中国や韓国のメーカーが大きなシェアを占めるようになった。IT産業に目を移しても、2000年代に世界最先端だった「iモード」がガラパゴス化して以降、日本は米国、特にシリコンバレーの企業群に遅れを取っている。

 ここで過去を「たら・れば」で語っても、時すでに遅しだ。なら、未来はどうか。新経済連盟が今年10月24日に主催したイベント『KANSAI SUMMIT 2017』では、日本が新たな技術立国に生まれ変わるかもしれない、明るい「たら・れば」話が披露された。

 話の主は、クラウド文書管理サービスを提供するエバーノートの元CEO(最高経営責任者)フィル・リービン氏。講演テーマは、彼の新会社オール・タートルズが運営する「スタートアップスタジオ」についてである。

フィル・リービン(Phil Libin)氏
ロシア生まれの連続起業家。2007年、インターネット上に文書などを保存・共有するクラウドサービス『Evernote』を開発・提供する米エバーノートのCEO(最高経営責任者)に就任。全世界で約1億5000万ユーザーが利用するサービスに育てた後、15年7月にCEOを退任(ユーザー数は退任時点のもの)。その後は米ベンチャーキャピタルを経て、17年5月に人工知能領域に特化したAIスタートアップスタジオを運営するオール・タートルズ(All Turtles)を創業した

 リービン氏が、「テクノロジーを武器に次々と革新的な作品を生み出してきたピクサーのような存在」と説明したスタートアップスタジオとはどんな組織なのか。そしてこの日、「スタートアップスタジオは日本人と相性が良い」と話したのはなぜか。その理由を紐解いていく。

ハリウッド・スタイルで新規事業を量産

 リービン氏の話を詳しく紹介する前に、まずはスタートアップスタジオについて説明しておきたい。欧米を中心に世界的に増えてはいるものの、日本ではまだ手掛ける事業者が少なく耳慣れない組織だからだ。

 10月20日に日経BP社が発刊した世界初の解説書『STARTUP STUDIO 連続してイノベーションを生む「ハリウッド型」プロ集団』(アッティラ・シゲティ著)には、スタートアップスタジオは「同時多発的に複数の企業を立ち上げる組織」であり、「起業家やイノベーターが新しいコンセプトを次々に打ち出す上で理想的な場を提供する」と書いてある。

 事業内容をひと言で説明すると「起業支援」になるが、投資、経営助言、ネットワーキングなどを主業務とするベンチャーキャピタル(以下、VC)やアクセラレーターとは異なる点がいくつかある。