この投資ファンドは、SFCフォーラムが同投資ファンドの管理法人(GP)を務め、ベンチャーキャピタルであるSeed Technology Capital Partners(東京都新宿区)が投資したベンチャー企業の事業支援などを担当する仕組みで運営される。広川事務局長が、同投資ファンドでのベンチャー企業の創業案件の発掘と投資事業の総括を担当する一方、Seed Technology Capital Partnersの渡辺安弘氏代表が投資先の事業支援を担当する。

 渡辺代表は、慶応大環境情報学部を卒業した後、ジャフコ(当時は日本合同ファイナンス)に入社し、ベンチャーキャピタルとしての投資活動に従事した後に、独立系ベンチャーキャピタルを設立。さらに現在のSeed Technology Capital Partnersを設立した経歴の持ち主である。

投資の規模はやや小振り

 現在、計画中の同投資ファンドは、規模は総額が3億円から5億円とやや小振りだ。フォンド投資期間は10年間(2年間の延長あり)の見通し。同投資ファンドの最大の特徴は、大学発ベンチャー企業の創業前の経営体制や事業計画などを練り上げる“ギャップファンド”として助言・支援をした後に、創業期前後のシード・アーリー期を重ねて支援する点だ。

 日本では、ベンチャー企業の創業前後のシード・アーリー期は基本設計から面倒をみるために手間がかかり、かつハイリスクであるために、ベンチャーキャピタルは投資に慎重な傾向が強いという実態がある。これに対して、当該投資ファンドは、その創業期のシード・アーリー期を担う。ベンチャー企業投資の中で、一番目利きが必要とされる時期であるシード・アーリー期に集中する姿勢をみせる。その後の、ミドル・レーター期は、既存のベンチャーキャピタルに投資・育成を任せる方針である。

 今回、総額3億円から5億円と、やや小振りな投資ファンドを運営する狙いは、投資資金を回収する出口戦略を手堅くするためである。1社当たりの投資額は原則1000万円から3000万円程度までと比較的抑え気味の投資とし、投資数も全体で10社から15社に抑える見通しだ。「投資ファンドの運営を担当する二人の能力範囲から、投資先のベンチャー企業へのハンズオン支援を十分に行える投資企業数を設定した結果」と、広川事務局長と解説する。

 投資対象をある程度、絞り込み、投資先のベンチャー企業へのハンズオン支援を十分にすることによって、ミドル・レーター期に進む確率を高め、投資先のベンチャー企業の出口(EXIT)となる局面で、投資資金をしっかり回収する戦略だ。この最初の投資ファンドでの成功実績を基に、第2の投資ファンドづくりに進む計画である。

 同時に、SFCフォーラムの事業活動費の確保や慶応大湘南藤沢キャンパスの各学部などに教育・研究資金を寄付することなどによって、同キャンパスから優れた独創的な研究成果がますます産まれ、それが慶応大発ベンチャー企業創業の好循環を産むことを目指している。

 このように、有力な私立大学である慶応大傘下にベンチャーキャピタルが2つでき、互いに切磋琢磨することで、日本の私立大学が自前のベンチャーキャピタルを持つさきがけになると期待されている。

丸山 正明(まるやま・まさあき)

技術ジャーナリスト。元・日経BP産学連携事務局プロデューサー
東京工業大学大学院非常勤講師を経て、現在、横浜市立大学大学院非常勤講師、経済産業省や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所の事業評価委員など。

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