投資実績を持つ実務者が投資判断チームを組織

 KIIは、組織面では慶応大の研究連携推進本部と強い連携を持っている。この結果、KIIの取締役会長には慶応大理工学部教授の菱田公一研究連携推進本部長が就任した。そして、KIIは研究連携推進本部が入居している慶応大南別館(東京都港区)の同じ階に入居している。これによって、慶応大の研究連携推進本部を通して、研究開発成果に基づく、“発明開示”や技術シーズ、事業化の可能性などのさまざまな情報を受け取る仕組みになっている。同時に、野村ホールディングスからも慶応大発ベンチャー企業の発掘案件や株式上場した際の市場性評価などを受け取る仕組みである。

 また「KIIの強みは、起業家・経営者として実績を持つ実務者がキャピタリストとして投資判断を下す点にある」と、山岸社長はいう。山岸氏は、2004年に創業したIT企業のグリーの共同創業者の一人であり、2015年まで取締役副社長として事業部門を統括してきた。この山岸氏に加え、野村証券などで投資業務をしてきた首藤秀司執行役員、ジャフコなどで投資業務をしてきた木下秀一執行役員、住友商事系の住商ファーマインターナショナル(東京都中央区)で投資事業などを担当してきた本郷有克執行委員の4人による投資判断チームが投資ファンドを運営する。

 KIIは、投資候補となる慶応大発ベンチャー企業の創業時を担う経営人材の見極めや事業計画精査などのハンズオンを十分に行う。そのベンチャー企業の事業のPOC(プロトタイプ)づくりや事業戦略などを十分に精査・支援し、「シリーズA、B」と呼ばれるシード、アーリー期の資金調達となる投資をリードするために、的確な助言を行う。さらに、「シリーズC」以降のミドル、レーターなどの事業拡大に必要な追加投資を行う。このハンズオン支援では、資本政策の策定や社外取締役の派遣、知的財産戦略の策定などと多彩な支援を実施する。当然、その慶応大発ベンチャー企業が目指す事業の顧客なども紹介する支援も必要に応じて行う。

SFCフォーラムは年内に投資ファンドを設立

SFCフォーラム事務局長の広川克也氏
SFCフォーラム事務局長の広川克也氏

 一方、新たにベンチャーキャピタルの設立をもくろんでいるのが、一般財団法人SFCフォーラム(神奈川県藤沢市)だ。慶応大湘南藤沢キャンパス(SFC)の支援機関であるSFCフォーラムは、2016年内に慶応大発ベンチャー企業を支援・育成する投資ファンド(投資事業有限責任組合)を設立する準備を進めている。AIやIoTなどを含むICTの分野を中心に事業化を図る慶応大発ベンチャー企業などの“創業期”を支援する方針だ。

 同投資ファンドは、湘南藤沢キャンパスにある慶応大の3学部(総合政策、環境情報、看護医療)・同大学院の2研究科(政策・メディア、健康マネジメント)の研究成果を基にして事業化を図る慶応大発ベンチャー企業を育成・支援する投資を行う。あるいは湘南藤沢キャンパスの卒業生が経営陣となるベンチャー企業を支援する。このため、「実際にはICTを中核に、湘南藤沢キャンパスの研究成果に関連する政策立案、看護・医療、人文社会学などを融合した独創的な事業計画を持つベンチャー企業を支援する」と、SFCフォーラムの広川克也事務局長は説明する。

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