人口動態はその国の経済に大きな影響を及ぼします。少子化・人口減社会に突入した日本に対して、将来の成長性を危ぶむ声が出るのはそのためです。筆者は、長らく住友信託銀行(現三井住友信託銀行)の資産運用部門で勤務した後、内外金融機関やシンクタンクで資産運用や調査研究業務に携わってきました。現在は相場研究家の肩書きで講演や執筆を行うほか、財団や金融機関の投資アドバイザーをしています。各国の人口データから経済や社会の出来事を振り返ると、日本以外でも心配な国があることがわかりました。それは中国です。

(写真=PIXTA)

 米国の歴史家、ウィリアム・H・マクニールは、20世紀に起きた両次大戦の背景には人口過剰問題があったと指摘しています(『戦争の世界史』中公文庫)。これは主に中東欧の情勢について記述したものですが、要約すると「農村で土地が足りなくなり、若者たちは親と同様の暮らしかたができなくなった。産業の拡大は人口の増加に追いつかず、欲求不満が社会的緊張をもたらした。この問題が最終的に解決をみたのは第二次大戦のときであった」ということです。

若者人口比率が高まると動乱が起きる傾向に

 戦前の日本も30歳未満が総人口の6割強を占めるなど、似たような状況にありました。これは子供の数が多かったからですが、子供を除く若者人口(15~29歳)に限ってみても、国民全体の25%、つまり4人に1人が若者でした。戦前の日本は10年に一度の割合で戦争や海外派兵を行っていましたが、若者主体の国なので良くも悪くもエネルギーが過剰だったためなのかもしれません。

 これは日本だけの現象ではありません。戦後の各国統計をみても、若者人口比率がピークを迎える前後に戦争や動乱が起きている傾向があるのです(図1)。米国のベトナム戦争(1964年)やソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)、アラブの春(2010年)などは、それに該当する事例です。若者人口とは、すなわち兵役対象年齢なので、その数が多ければ為政者は戦争を行うことに対する抵抗感が薄れるのでしょう。戦争ではないが、日本の大学紛争(1969年がピーク)や、中国の天安門事件(1989年)もそうしたポイントで起きています。紛争や大規模デモは若者の向こう見ずな熱気が結集しなければ出来ないことです。

 では若者が少なければ事件が起きないかというとそうでもありません。少ないときには別の姿で波乱が起きています。例えばソ連の崩壊(1991年)は若者人口比率がボトムの時に起きていますし、1997年の日本や2011年の欧州での金融危機も、若者人口比率の低下が加速する局面で起きているのです(図1)。これは国家としての体力の衰えが形となって表れたということかもしれません。国民の平均年齢が上がれば、その集合体である国家も、従来なら考えられなかったような問題に直面するようです。