モーリク:特に秘訣はなく、哲学があります。そして、その哲学に基づく明確なターゲットがあります。

というと?

モーリク:例えば、ステアリングの入力に対してクルマがどう反応するか、リアのスタビリティの高さはどうか、などそれぞれのモデルに対して明確なターゲットがあり、それが全プロダクトにわたって一気通貫している。そのため、共通したドライブフィールがあると感じるのだと思います。それは言うならば、ポルシェ流の「ハンドライティング(筆跡)」のようなものなのです。

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 ポルシェ流の“筆跡”。なるほど言い得て妙だ。他社が真似をしたくてもなかなかうまく真似のできないノウハウがつまっているのだ。

 一方でポルシェであっても、いまや安全技術とは無縁でいられない。大きな声で謳ってはいないが、この新型パナメーラをはじめ、スポーツカーの911にも実はオプションながら、半自動運転とも言えるACC(アダプティブクルーズコントロール)が装着可能だ。また追突された際などに二次被害を防止するために車両を減速させるポストコリジョンブレーキシステムなども標準装備している。

 モーリク氏もこれらの“運転支援”システムについては、他部署で開発されてはいるものの、テストは行うと話していた。しかしいわゆる“自動運転”に関しては言及しなかった。果たしてポルシェが自動運転を取り入れるときがくるのだろうか?

 最近、ポルシェAGの社長Dr.オリバー・ブルーメ氏は自動運転に対して以下のようなコメントを発表している。

ポルシェ社長が示した「自動運転」への考え

「ドライブという行為とポルシェは、決して切り離すことができません。ドライブは“スポーツカー文化”そのものですから。しかし、だからといって自動運転を全否定するほど我々は盲目的ではありません。我々の革新は今、IT企業の攻撃から身を守るために動いています。

 ポルシェは4つの主要分野に全力を傾注します。パワートレイン、軽量化、接続性、ドライバー・アシストおよびアクティブ・セーフティー・システムです。

 計り知れないアイデアと“学び”への文化を持つグーグルのようなIT企業から学ぶことは多いですし、私は大きな敬意を抱いています。ITや通信関係の企業との密接な協力関係なしに、自動運転の完結はあり得ません。未来を見据えて採用したいと思う人材にとって魅力的な企業であり続けることも重要です。人材獲得戦争は非常に過酷ですから、より多くの可能性と選択肢を提供しなければなりません。ポルシェには常に発言力を保てる社風が必要です」

 今年6月ポルシェは自動車のプレミアム・セグメントにおける“デジタル・モビリティ・ソリューション”分野への大手プロバイダーにも発展すべく、新会社「ポルシェ・デジタルGmbH」を設立している。これはコネクティビティ、スマートモビリティそして自動走行の分野において、ポルシェと世界中のイノベーターとのインターフェイスとなる企業だという。近い将来、同社はシリコンバレーと中国にも子会社を設立し、ベンチャーキャピタルや新興企業への投資を通じて新しいテクノロジーへの対応を進めていくという。いま同様の動きをメルセデスやBMW、アウディをはじめ世界各社が始めている。

クルマは自分の意思で動かしたい

 この数年で“自動運転”という言葉をよく耳にするようになった。シリコンバレーをはじめ世界ではすでに実証実験がはじまっているし、明日にでも実現できそうな勢いで報道が相次いでいるが、ことはそれほど単純なものではない。2020年のオリンピックイヤーや2025年に実現目標を掲げてはいるが、クローズドな場所ならまだしも、リアルワールドで、しかも日本で、それを現実のものとするのは相当な困難が伴うはずだ(導入から15年が経過したETCですら、利用率は100%とはいかないわけで)。個人的にはそれまでは、ポルシェのようなクルマを手に入れて、せいぜい自らの意志で動く“自動”車を享受したいと思うのだ。

 次回は、ポルシェがどのように作られているのかを探ります。ドイツ・ライプツィヒに作られたパナメーラの新工場見学記をお届けします。

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