いま、日本のメーカーを含め世界中の自動車メーカーがこぞってニュルブルクリンクに開発に来るようになっていますが、そういう現状をドイツメーカーの人たちはどう思っているのでしょうか?

モーリク:私たちにとっては何も問題はないですよ(笑)。競争は歓迎します。他のブランドがここで開発することを望んでいるのであれば、それは私たちの哲学が正しかったと言えますよね。

いまモーリクさんがポルシェのダイナミクス性能を司る責任者として、ポルシェはなぜ、世界中から注目される現在のようなパフォーマンスが発揮できていると分析されますか?

「正しいもの」に全てを注げる体制がある

モーリク:例えばこのパナメーラの開発をスタートした当初から、すべてを「正しいもの」にすることに注力してきました。正しい結果を導くために、最初にあるべきコンセプトを決め、かなり初期の段階から、どのタイヤを使うか、タイヤの幅やディメンジョンをどうするか、サスペンションはどうするか、エアロダイナミクスなど車両のハード面をどうすべきか、すべてにおいて検討を重ね、私たち自身でそれを決めることができました。

 他社はさまざまな制約の中でクルマの開発をしなければならず、おそらくコンセプトすらしっかりと定めることができないケースも多いでしょう。そういう意味で私たちは恵まれているのだと思います。

新型パナメーラのシャシー図。フロントにはアダプティブエアサスペンションが備わり、911などで磨き続けてきた電子制御ダンパーコントロール機能「PASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)」を組み合わせる。さらにトルクベクタリング機能や電動パワーステアリングなどを含めて「4Dシャシーコントロールシステム」が車両全てのシャシーシステムをリアルタイムに分析、同期するという。サスペンションアーム類はアルミ製で鍛造品や中空品を部位によって使い分け、最適化。“ブレーキ命”のポルシェらしく、キャリパーの大きさは特筆ものだ(画像はオプションのカーボンブレーキ用でフロントは10ピストン!とか)
新型パナメーラのシャシー図。フロントにはアダプティブエアサスペンションが備わり、911などで磨き続けてきた電子制御ダンパーコントロール機能「PASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)」を組み合わせる。さらにトルクベクタリング機能や電動パワーステアリングなどを含めて「4Dシャシーコントロールシステム」が車両全てのシャシーシステムをリアルタイムに分析、同期するという。サスペンションアーム類はアルミ製で鍛造品や中空品を部位によって使い分け、最適化。“ブレーキ命”のポルシェらしく、キャリパーの大きさは特筆ものだ(画像はオプションのカーボンブレーキ用でフロントは10ピストン!とか)
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ポルシェには、ビークルダイナミクスを担当するメンバーがどのくらいいて、どのような組織になっているのでしょうか?

モーリク:メンバーは約120名います。チームは、リアエンジン、ミッドシップエンジン、そしてフロントエンジン毎にチームがあります。これに加えてスタビリティコントロールシステムのチームもあります。例えば、ESP(横滑り防止装置)を制御するチームですが、これもフロントエンジンとリアエンジンでチームが分かれています。

 また、シミュレーションをするチームや初期の開発フェーズを担うチーム、開発管理のチームなどもあります。この新型パナメーラから、4Dシャーシコントロールというすべてのシャシーを統合制御するシステムを導入していますが、これらはサプライヤーから供給されるものだけに頼らず、自社ですべてコントロールするようにしています。

すべてのポルシェに通じるものは何か

さすがに綿密なチーム体制ですね。国産車の開発過程の取材をしたときに目にしたことがあったのですが、開発過程でこれはダメ、やり直しなどと言うことはよくあることですか?

モーリク:基本的には無いですね。メンバーはみな優秀で、基本的には大きな軌道修正はありません。せいぜい細かな手直しくらいです。

いまポルシェであってもスポーティなだけでなく、快適性も求められる時代ですが、あえて共通する哲学を、ひとことで言えばどうなりますか?

モーリク:ターゲットとしているのはやはり、「Most sporty car in each class」(それぞれのクラスで最もスポーティなクルマ)であることです。

なるほど。最後に先程ドエナーさんにも質問してみたのですが、ポルシェにはすべてのモデルに、共通した乗り味があると思うのですが、モーリクさんはその秘訣が何であると思われますか?

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