制震技術が生む新たな商機

 鹿島や大林組といった大手ゼネコンが制震技術の開発に注力するのは、そこに膨大な市場があるからだ。日本ではBCP(事業継続計画)の観点から、最新の防災技術を積極的に採用したオフィスビルの人気が高まっている。矢野経済研究所(東京都中野区)の予測では、BCPや防災、情報セキュリティーに関する市場規模は2020年度に9076億円と2015年度から約15%増える。

 その一例が、今年4月に完成した東京・大手町の「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」だ。摩擦ダンパーなどを使った制震装置や耐震壁を配置し、鉄骨断面の中にコンクリートを入れた強度の高い柱も採用。事業主の三菱地所によると、通常のビルの1.5倍の耐震性能を備えているという。

 熊本地震が象徴するように、日本では大災害のたびに安全対策の“想定漏れ”が判明。その穴を埋めるようにして、防災の取り組みが進展してきた。

 帰宅困難者が続出した東日本大震災の教訓から、グランキューブでは非常時にエネルギーや水を自給できる仕組みを整えている。耐震性に優れた都市ガスを燃料とする発電設備や、断水時に高度ろ過により井戸水から飲用水を確保できる設備などだ。建物自体の強固さと設備面の充実ぶりが相まって、入居企業は完成前にほぼ決まった。

三菱地所の「グランキューブ」
都市ガスを使う発電設備や、ガスと重油の両方で運転可能な非常用発電機を備えている
井戸水をくみ上げ、高度なろ過装置を使うことで非常時に飲用水を確保できる

 こうした技術やノウハウが求められるのは日本国内だけではない。東京大学生産技術研究所の都市基盤安全工学国際研究センターは、昨年4月にミャンマーのヤンゴン工科大学と組み、防災技術専門の研究センターを開設した。耐震や制震技術を海外に展開することで、新興国の都市計画などに貢献できるほか、防災ノウハウの輸出によるビジネスチャンスにもつながるためだ。

 センター長を務める目黒公郎教授は「関係者誰もがメリットを受けるには、最新の技術を活用した社会制度の改革も必要」と話す。最新技術を使いこなすためには、コスト負担などの議論を深める必要がある。

(日経ビジネス2016年7月18日号より転載)