300トンの鉄塊を屋上に設置

 D3SKYの仕組みはこうだ。

 ビルの屋上に高さ約12mのやぐらを組み立て、その中に重さ300トンの重りを8本のケーブルでつるす。

 振り子式の重りは、前後左右いずれの方向にも動く設計になっている。地震が起きると、建物が揺れる方向と逆方向に重りが振れ、振動エネルギーを相殺する。建物が元の方向に戻ろうとする時も、重りはその逆方向に振れる。この動きを繰り返すことで、建物の揺れを大幅に抑制できるわけだ。

 この技術と既存の制震技術を組み合わせれば、長周期地震動の揺れの幅を半分以下に低減できる特徴があり、揺れを早期に収束させる効果も期待できる。東日本大震災では、一部のビルが地震発生から10分以上も揺れ続けたという。D3SKYを導入すれば、早期の避難などにも役立ちそうだ。

 TMDは従来、高層ビルの風揺れ対策として活用されていたが、今回鹿島が初めて本格的な地震対策として導入した。風揺れ対策では50トン程度の重りが使われるが、地震の揺れを軽減するには300トンの重りを複数台設置することが求められる。実際に、新宿三井ビルの屋上にはD3SKYが計6基設置されている。既存のビルに巨大な重りを後付けする工法も鹿島が開発した。

 地震自体のエネルギーを利用して揺れを軽減する技術は、振り子だけではない。鹿島は建物の柱と柱の間に挟み、油の粘性を利用して衝撃や振動を和らげる「オイルダンパー」でも昨年、新装置を開発した。複数の超高層ビルへの導入が進む「HiDAX-R(ハイダックスレボリューション)」がそれだ。

 地震に伴う建物の振動エネルギーを熱に変換して吸収し、揺れを低減させる。一部のエネルギーはオイルダンパーの抵抗力アシストに活用する。自動車のブレーキ制御などで使われる「エネルギー回生」の原理を応用した。

 HiDAX-Rは三井不が東京都千代田区で計画する都市開発など、3件の大型プロジェクトで導入が決まっている。D3SKYも順次大型ビルへの導入を計画している。

 鹿島先進技術グループの栗野治彦・統括グループリーダーは「より高度な制震技術への事業主のニーズは年々高まっている」と説明する。設置場所や建物の構造に合わせて、製品をカスタマイズするとしている。

 「震度5でも鉛筆が倒れない!」

 東京都清瀬市にある大林組の技術研究所を訪れると、こんな言葉が目に飛び込んできた。同社が開発した制震装置「ラピュタ2D」を導入すれば、「全く揺れない建物」を実現できるという。

 小型の実験装置で記者が実際に体験してみたが、事前に聞いていなければ揺れに気付けなかったほどだ。

 ラピュタ2Dの特徴は、ビル底部に設置したセンサーと、それに連動するアクチュエーター(加力装置)にある。

 地震が発生すると、センサーが地盤が揺れた方向や大きさを1000分の1秒単位で検知。その情報を独自システムで分析して、アクチュエーターに伝達する。指令を受け取ったアクチュエーターは、オイルの流量などを調節し、地震と反対方向に建物を動かす。アクチュエーターの動きは500分の1秒ごとに調整でき、建物の揺れを相殺できる。

 積層ゴムなどを建物と基礎の間に設置し、地震の揺れを受け流す技術は「免震」と呼ばれる。だが従来の免震装置では、建物に伝わる地面の揺れを3~5分の1程度にまでしか低減できなかった。大林組はこの免震技術に、ラピュタ2Dを組み合わせることで、揺れを実に30~50分の1まで減らせた。

 名称の由来はアイルランドの作家、スウィフトの『ガリバー旅行記』に登場する天空の城から。「地面の揺れに影響されず建物が空中に浮かんでいるかのような状態を実現できる」(大林組技術研究所の勝俣英雄副所長)。同社は免震・制震関連の物件で年間5~10棟の受注を見込んでおり、積極的にラピュタ2Dの採用を訴求していく考えだ。