「日本にはイノベーションが起きない」と言われるようになって久しい。「イノベーションを生み出す鍵は人事にある」と話す早稲田大学ビジネススクールの入山章栄氏と、人事戦略コンサルティングの第一人者である南和気氏が、イノベーションが起きる組織づくりについて語りあった。

(構成:井上佐保子)

イノベーションは知と知の新しい組み合わせ

:「イノベーションを起こせる人材を日本企業は生み出せるのか」というのが、対談テーマなのですが、分かっているようで分かっていないのが「イノベーション」という言葉ではないかと思います。まずは入山先生が考えるイノベーションの定義について教えて頂けますか。

入山:イノベーションの定義は人によって違うので、絶対的な定義があるわけではないのですが、僕の理解でお話しさせていただきます。まず、日本では、イノベーション=技術革新という言葉が定着しているところがあるのですが、これが大きな誤解でして、今の時代で求められているイノベーションというのは技術革新ではなく、あえて言うなら「価値革新」です。とにかく新しい考え方を提示して、価値を変化させることができれば、別に技術が伴っていなくともイノベーションになるのです。

:やはりアマゾンやアップルといった企業がやっているような、これまでの価値観を打ち破り、世界をがらりと変える大きな変化をもたらすものといったイメージでしょうか?

入山:もちろんそれもそうなのですが、個人的には、もっと身近な、もっと細かい、日々の業務改善といったレベルでも、「少しでも新しいことをして変化して前に進む」ということをイノベーションと考えて構わないのではないかと思っています。

入山章栄氏
慶応義塾大学経済学部、同大学大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2003年に同社を退社し、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサー(助教授)に就任。2013年から現職。専門は経営戦略論および国際経営論。

:新しいことをして変化して前に進む。身近なところからもイノベーションは起きるという理解ですね。

入山:そうでないと、イノベーションが自分ごとにならないですよね。イノベーションというのは、R&Dやマーケティング部、新規事業開発部がやることだと思われていて、どこか他人ごとになってしまうところがありますが、本来、イノベーションというのは会社や組織が少しでも新しいことをやることなのですから、会社全体の問題であるはずです。そして、僕は人事こそがイノベーションの鍵を握っていると考えています。なぜなら、会社というものは結局、人でできているからです。イノベーションを会社全体の問題として捉えると、新しいことをして変化しなければならないのは、結局その中にいる人なのです。

:そもそも、人が新しいことをして変化をつくる、つまりイノベーションを起こすためには、何が必要なのでしょうか。