各農家が生産情報を相互監視

 食品は安全性の面から、特に厳重な物流管理が求められる。野菜の生産者はなぜ、「情報が正しい」と胸を張って宣言できたのか。そしてなぜ、消費者はその“セールストーク”を信用したのか。ここに、ブロックチェーン技術の肝がある。

 今回の実験では、生産者が野菜の植え付けや畑の除草、収穫などを行った段階で、その時のデータを書き込んだ。生育状況だけでなく土壌の状態なども、写真付きで逐次アップする。生産農家の書き込みが一定の量になると、データのブロックができる。その後インターネットを経由し、各生産者が持っているコンピューターでデータが共有される。そして、書き込まれた情報が正しいのかを全員で常に監視する。

 ブロックチェーンの仕組みでは、コンピューター同士の多数決によってデータが正しいか否かが決まる。そのためデータを改ざんしようとした場合、ネットワークでつながっているコンピューターの過半数を同時に乗っ取り、データを書き換える必要がある。ある生産者が農薬使用量を後から偽装したいと思っても、現実的には不可能だ。

●従来の情報システム
<span class="pink2gyo">●従来の情報システム</span>

 一方、従来の情報システムではデータを集中管理するサーバーが乗っ取られると、データの信頼性は失われる。

 電通国際情報サービスの鈴木淳一氏によると、3月以降「他の野菜の産地や畜産農家からの問い合わせが増えた」という。きちんとこだわりを持って作物を育てている人にとって、ブロックチェーンは魅力的に映るようだ。

 食品流通だけではない。データの堅牢性が求められる分野と、ブロックチェーンは相性が良い。システム開発のインフォテリアは今年の株主総会で、ブロックチェーンを使った議決権行使システムを構築し、実験した。ミスや不正を防げるだけでなく、「株主総会の主催者でも投票結果を改ざんできない」(同社広報室)という。

 不動産への応用も期待されている。賃貸住宅を借りる際、物件を決めた後も金融機関による審査や重要事項の説明など、煩雑な確認作業が求められる。積水ハウスはこの問題を解決するため、ブロックチェーンを活用した賃貸住宅の情報管理システムの構築を始めた。プロジェクトを担当する上田和巳氏は「将来的には、物件の内見から鍵の受け取りまでが即日完了するような仕組みにしたい」と語る。

 ブロックチェーンの2つ目の特徴は「安さ」。巨大なサーバーでデータを管理する必要がないため、サーバー導入費や維持費が抑えられる。技術が進展すれば、システムに多額の投資をしている銀行やクレジットカード会社に、大きなメリットがあると考えられる。

ブロックチェーンの採用企業が相次ぐ
●ブロックチェーンを活用した主な取り組み
<span class="pink2gyo">ブロックチェーンの採用企業が相次ぐ</br>●ブロックチェーンを活用した主な取り組み</span>

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