
2017年のノーベル文学賞受賞が決まったカズオ・イシグロ氏は、受賞が決まった10月5日午後5時から、ロンドン市内にある同氏の出版を手がけてきた英出版社フェイバー&フェィバーの本社ビルで会見を開いた。そこは、1905年から第2次世界大戦期まで、英作家のバージニア・ウルフやE・M・フォスター、経済学者ジョン・メイナード・ケインズら芸術家や知識人が集まった場所として知られる「ブルームズベリー地区」のど真ん中だった。
メディア関係者がひしめく小さな白い部屋に17時過ぎに登場すると、イシグロ氏は冒頭、まず一言申し上げたいと語り、自ら用意してきた文面を読み上げた。

「(今回のノーベル文学賞受賞は)まったく想定していなかった受賞でした。世界がこれまでの価値観や今の指導者たち、そして安全というものに対し不安を感じている中での受賞です。このような名誉ある賞を受賞できたことが、たとえささやかであったとしても、この世のためになり、少しでも平和につながることを願っています」──。
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