収穫作業の流れは、①作物の栽培棚の間を人(ロボット)が行き来し、②出荷に適した熟度の実を見極め、③果柄と呼ぶ実を支える茎から実を切り離して容器に入れる──の3つになる。

 これらの動作をロボットで実現するには、センサーなどで障害物や路面の状態を検知しながらぶつからずに移動する「自律走行」、センサーやカメラで作物の状態を認識して取るべき実を判別する「画像認識」、認識した実をロボットのアーム(腕)で切り取り、落とさず容器に入れる「摘み取り動作」の3つの技術要素が必要になる。中でも収穫ロボットで重要なカギを握るのが、「画像認識」と「摘み取り動作」だ。

 パナソニックは、搬送ロボットなどで培った自律走行やセンサー技術などを生かし、フルーツトマトと呼ばれる小ぶりのトマトの収穫に特化したロボットを開発している。

 フルーツトマトに着目したのは、施設園芸で年間10カ月とほぼ通年での収穫ができ、ロボットを導入した際の稼働率が高いから。普通のトマトと比べさらに単価が高いことも理由だ。

実の成熟度を赤みで判断

採るべき実をセンサーで判断
●パナソニックの画像解析の仕組み
距離画像センサーを搭載したカメラで認識した画像を処理し、作物の色、形、場所を判断する。カラー画像で果実を検出し、赤外線画像で茎などを検出。距離画像で位置を検出する

 画像認識で重要になるのが、赤色と緑色の分析だ。トマトもイチゴも熟すと赤くなるが、その赤みの微妙な違いを分析しなければ収穫すべきか見極められない。緑色の認識は、茎や葉が、実とどのような位置関係にあるかを判断するのに不可欠になる。

 パナソニックの場合、まずカラー画像で赤い果実を検出し、次に赤外線画像で茎などを識別。さらに3次元センサーの画像で実の位置を判別する(上の図)。採るべき実の位置が分かったら、次は摘み取りだ。同社はフルーツトマトの収穫に適した「ダメージレスハンド」と呼ぶ装置を開発した。

 ロボットが摘み取る時はハサミを使うのが一般的だが、ダメージレスハンドは上下に配した2つの輪から成る。これらの輪にトマトの実をくぐらせ、上方の輪を手前に引くことで果柄から実を切り離す。同社生産技術本部の本間義康・ロボティクス推進室長は「作業者が手でトマトをもぎ取る動作から発案した。動作中に、ほかの実や葉などを傷つけることも少ない」と話す。

 パナソニックでは、1ヘクタール(ha)以上の大規模施設園芸を対象に1ha当たり4台の導入を想定する。収穫時間はトマト1つ当たり10秒以下が目標。3年以内の発売を目指し、価格は1台500万円程度を予定している。

 同じくトマト収穫ロボットを開発しているロボットベンチャーのスキューズ(京都市)は、2つのアームで効率的に実を採取できるロボットを開発する。例えば、人が作業するのと同様に1つの手で実を取り、もう一方の手で容器を持って素早くそこに入れるといった動作が可能になる。1つのアームで全ての作業をするよりも効率が高い。現在、2つのアームがどのように作業を分担するかなどを研究中で、5年後の実用化を目指す。1台500万円程度で、年間100台程度の販売を見込む。

 浜松市にある農業設備メーカーのシブヤ精機は、他社に先駆けてイチゴ収穫ロボットの開発に取り組んできた。2014年4月から、地面より高い位置で栽培棚を使ってイチゴを育てる高設栽培に対応した収穫ロボットを販売している。

 特徴は、夜間に稼働する点。LED照明を装備し、イチゴに光を当てながら収穫すべき果実を探す。日中は太陽光が入るため、時間帯や曇り加減により色味が微妙に変化する。一方、外部の光がほとんど入らない夜間はLED照明により安定した光量で画像を認識でき、判定のブレが少なくなるという。