黒船来航と相まって幕府にダメージを与えた連続災害

 幕末もまた然りで、1854年に安政東海地震、その32時間後には安政南海地震が起きました。そしてその翌年には安政江戸地震と、連続して災害に見舞われています。これだけの天変地異に対処するだけでも大変なのに、黒船来航後の政治経済の混乱が重なって、幕府の財政は破綻したのです。相次ぐ天変地異と内憂外患、そんな大事が続けば、徳川260年の治世が終焉を迎えたのも当然だと言えるでしょう。

 興味深いのは、この80年周期の当該期間には、日本のみならず海外でも混乱の発生が目につくことです。たとえば1780年の前後10年には米国独立戦争(1775~83年)、フランス革命(1789年)といった世界史上、特筆すべき出来事が起きています。フランス革命の原因としては、アイスランドのラキ火山の噴火(1783年)が飢饉をもたらしたことも指摘されています。

 1860年前後の世界の動乱はもっと大きいかもしれません。まず欧州では1853年にクリミア戦争が勃発し、敗れたロシアは農奴解放などの近代化に着手しました。また1861年にはイタリアが国家統一を果たしています。1870~71年に起きた普仏戦争では、戦いに勝利したプロシア主導でドイツは国家統一を果たしました。一方、破れたフランスはナポレオン3世が失脚し、帝政から共和制に移行しました。米国では1861~65年に南北戦争が起きて、南軍の敗北で奴隷制が廃止となりました。

 つまり、1860年を挟んだ前後10年の間に、ロシアを含めたG8のうち英国とカナダを除く6カ国が近代国家に脱皮しているのです。これは実に不思議なことです。

 次の1940年を挟んだ前後10年間は戦争の時代だと一括りにされがちですが、実際には1937年に始まった日中戦争と、ナチス・ドイツのポーランド侵攻が口火を切った1939年からの欧州の戦争は、当初、別々の戦争でした。それが最終的に米国をも巻き込んだ世界大戦となり、結果的に戦前と戦後では全く違う世の中になったのです。

サイクルからは次の転機は2020年

 高橋氏が指摘した事例はここまでですが、1460年代の応仁の乱(1467年)、1540年代のポルトガル商人の種子島漂着と鉄砲伝来(1543年)も付け加えると、「80年周期の大変動」はさらにさかのぼることができるかもしれません。

 こうした80年周期の“呪縛”が今も有効だとしたら、次の転機は2020年になります。筆者はいま財団や金融機関などに投資のアドバイスをさせて頂いているのですが、講演でそんな話をすると、一様に「あと2年ですね」という反応が返ってきます。しかし過去の事例が示すように、中心年に対しプラスマイナス10年程度の幅があるわけです。

 ですから、私はすでに今回の混乱期が始まっているように思います。おそらく2011年3月の東日本大震災がその始まりだったのでないでしょうか。

 とすれば、今後は我々の予想を超える大きな変化が起きる(すでに起き始めている)ことになります。幕末はちょんまげ姿がノーマルだったのに、数年後にはそんな人物は皆無になりました。戦前は男の子の憧れの的だった軍人が、終戦後は公務員の立場なのに 全員が失職してしまいました。あるいは経済面でも、1860年や1940年の事例をみると、古い国家体制が壊れる過程でインフレが猛威を振るい、わずか数年足らずの間に米価や商業地の地価が8倍になっています。

図1 1860年と1940年の事例、数年後には大インフレで価格が急騰している(出所:江戸物価事典、日本不動産研究所)
図1 1860年と1940年の事例、数年後には大インフレで価格が急騰している(出所:江戸物価事典、日本不動産研究所)
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 ちなみに幕末は、幕府が外圧に屈して金銀交換レートを改定したことで、日本から金貨が流出、その代わりに海外から大量の銀貨が流入しました。理由は、金と銀の交換比率が日本では1:5だったの対し、海外では1:15だったためです。銀貨の大量流入は通貨供給量が急増するということなので、猛烈なインフレになったのです。当時の様子を記した文献に、日本からあまりにも多くの金貨が流出したので、海外では金銀の交換レートが銀優位に傾いたとあったので、調べてみるとその通りでした。

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