下を向いたら床が「素通し」

 自動車教習所では、運転する際には「死角に注意するように」と教わる。戦闘機も事情は変わらない。機体の陰になる真後ろから後下方にかけての範囲は、特に用心する必要がある。

 だからこそパイロットは「Check Six」を訓練中にたたき込まれる。この場合のSixとは6時の方向、つまり真後ろを指す。気付かない間に敵機が真後ろから忍び寄ってきて撃たれる危険性が高いので、警戒を促しているわけだ。

 F-35にはこうした課題を解決する最新装備も搭載された。それが「EO-DAS(Electro-Optical Distributed Aperture System)」だ。従来の戦闘機にはない「全周視界」を実現している。

 EO-DASは、機体の周囲6カ所に取り付けた赤外線センサーの映像を、ヘルメットの前面についているバイザーに投影するシステムだ。センサーがパイロットの頭の向きを常に検出しており、パイロットが見ている方向の映像を表示する。

 例えばパイロットが真下を見ると機体の真下の映像が表示される。つまり床が素通しになったのと同じである。こんなことができる戦闘機は史上初めてだ。赤外線センサーを使用しているので、昼夜・天候を問わずに視界を確保できる利点は計り知れない。