菌を持ち込まない、増やさない
マルハニチロが2015年に発売し、現在、「鶏肉と野菜のハーブ焼き」など7品目を展開するロングライフ食品も、独自の技術で殺菌を行う。「低温度殺菌」と呼ばれるこの技術は、100度よりも低い加熱温度で、時間などを調整しながら殺菌する方法だ。
一般的に100度以上に加熱して殺菌するレトルト食品は、熱を加えることで素材に含まれる糖分が焦げてしまったり、細胞組織が破壊されたりしやすいため、風味や口当たりが悪化してしまいがちだ。
低温度殺菌は、牛乳の殺菌方法として古くから知られている。だが総菜は、牛乳と違って材料の種類によって繁殖しやすい菌が異なる。そのため、原料に付着しやすい菌を把握した上で、殺菌の温度や時間といった条件を細かく設定できる機器を使う必要がある。
マルハニチロでは、新たな殺 菌技術の採用とともに、菌を「持ち込まない」「増やさない」ための体制整備にも注力。「ロングライフ食品用に新設した工場は、菌の増殖を防ぐため、全体を冷蔵庫のように低温に保っている」とロングライフチルド事業推進室の宮下昌尚副部長は説明する。室内の温度が一定以上に上がった場合、どのくらい急激に冷やして温度を元に戻すかといったルールまで細かく定められている。
また、原料の選定にもこだわる。原料に付着している菌で問題になるのは、収穫した畑からの土壌菌が多い。熱に強く、殺菌にてこずるケースが少なくないからだ。そのため、事前に産地の土壌菌をチェックし、菌数の少ない生産地を選定する。その後も定期的に生産地に赴いて土壌を確認。工場内の各製造工程でも、菌の種類と数は細かくモニタリングしている。
マルハニチロがこうした取り組みを行うに当たっては、提携先であるフランスの大手食品メーカー、フローリ・ミションの指導を受けた。ただし、フランスと日本では、冷蔵品の管理温度が異なるため、殺菌の条件設定などは、全て日本で独自に定めているという。
総菜メーカーのヤマザキ(静岡県吉田町)も、ひじきなどの和総菜やポテトサラダのようなサラダ類で、パウチで密封後に低温度殺菌の技術を取り入れている。「冷たいサラダの風味を維持しつつ、賞味期限を延ばせるのは低温度殺菌の技術ならでは。特にマヨネーズを使ったサラダ類は加熱すると油分が分離しやすいため、和総菜に比べて殺菌時間を短く設定している」(同社)。
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