鈴木:自分で組んだクルマだもん。レストアが趣味みたいなものだし、独学でね、もともとは自転車をイジってたんですよ。クルマはその延長みたいなもんで、ちょっと部品点数が多いだけじゃないですか。

どうかな、たしかに356は今のクルマに比べればシンプルな構造だと思いますけど(笑)。もう1つはどんなトラブルだったんですか?

鈴木:もう1つは、いまもそれを抱えたままだけど、トランスミッションの1速のギアが欠けちゃった。モスクワにロシアで唯一ポルシェセンター(正規ディーラー)があるんだけど、ちょうどそのあたりで出発してから1万kmに到達するので、オイル交換とか基本的なメンテナンスだけさせてねって事前に日本からお願いしてたんですよ。

ロシアにポルシェディーラーがあるんですねえ。でも時代的に356を触れるメカニックなんていないのでは?

モスクワを出たら、ミッションからすごい音

鈴木:もちろん、最初は向こうの答えも「356を診られるメカニックはいません」というものだった。でもオイル交換もプラグ交換もポイント交換も全部自分でやるから、設備だけ少し使わせてってお願いしたんですよ。行ってみたらモスクワでも大歓迎されて、盛大に見送ってもらって、しばらくは何の問題もなかった。ところが、1速に入れた瞬間にすごい音がしたのよ。直感的にヤバイなと思ったけど、原因がわからない。知り合いのメカニックに電話してみても音だけじゃ判断できないっていう。それはすごい不安だったね。

さすがにミッションは道端で修理するわけにはいかないでしょうし。

鈴木:それでもとりあえず走るから不安なままラトビアに入りました。ほとんど2速発進で、なんとかやりすごして。オーストリアのウィーンの近くにM.barbachという古いポルシェを診るショップがあるのを思い出して、ネットで検索して行ったのよ。それでまずはミッションオイルの交換をしてみようって、ドレンボルトをあけたら、マグネットにコレがついてたのよ(ポケットからおもむろに金属片を出す)。

なんですか、これ?

マグネットにくっついて出てきたのは……
マグネットにくっついて出てきたのは……

鈴木:ミッションが欠けたんだね。「ああ、これか」って。1速を労わらなきゃいけない状況は変わらないけど、原因がわかって精神的にすごく楽になった。今となっては1速で良かったよね。ゆっくり入れて、早めに2速に上げちゃえばいい。もし4速だったら、高速で走れないからもっと苦労したと思う。でもこんなの想定外だよね。ギアが欠けたのはポルシェ人生初ですよ。

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