日本とインドは今まさに蜜月時代を迎えていると言えるが、両国は古くからひかれ合ってきた歴史がある。10年前の2007年に訪印した安倍首相は、インドの国会で演説し、次のように述べている。

「この人が自分の尊敬する国日本から来た首相である」

 「私(安倍首相)の祖父・岸信介は、いまからちょうど50年前、日本の総理大臣として初めて貴国を訪問しました。時のネルー首相は数万の民衆を集めた野外集会に岸を連れ出し、『この人が自分の尊敬する国日本から来た首相である』と力強い紹介をしたのだと、私は祖父の膝下(しっか)、聞かされました。敗戦国の指導者として、よほど嬉しかったに違いありません。

 また岸は、日本政府として戦後最初のODA(政府開発援助)を実施した首相です。まだ貧しかった日本は、名誉にかけてもODAを出したいと考えました。この時それを受けてくれた国が、貴国、インドでありました。このことも、祖父は忘れておりませんでした。

 私は皆様が、日本に原爆が落とされた日、必ず決まって祈りを捧げてくれていることを知っています。それから皆様は、代を継いで、今まで四頭の象を日本の子供たちにお贈りくださっています。

 ネルー首相がくださったのは、お嬢さんの名前をつけた「インディラ」という名前の象でした。その後合計三頭の象を、インド政府は日本の動物園に寄付してくださるのですが、それぞれの名前はどれも忘れがたいものです」

(2007年8月22日、インド国会における安倍首相の演説から)

親子2代の首相が上野動物園に象を贈る

1957年、ネルー首相と娘のインディラ・ガンジーが上野動物園を訪問し、自ら贈った象のインディラと対面した。(写真:日印協会所蔵)
1957年、ネルー首相と娘のインディラ・ガンジーが上野動物園を訪問し、自ら贈った象のインディラと対面した。(写真:日印協会所蔵)
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 1947年8月、英国の植民地からの独立を果たしたインドの初代首相がジャワハルラル・ネルーであった。そのネルーの日本に対する思いの象徴が、上野動物園の象である。

 日本では戦争中、各地の動物園では、猛獣が毒殺された。戦火が及んだ場合に、猛獣たちが脱走することを阻止するためであった。

 戦後の民主主義学習方針の一つに子供議会があった。国会や地方議会を模倣して子供たちが議論し、外に訴えようとの趣旨であった。1949年5月、東京・台東区の子供議会は、「上野動物園に象を」と決議した。子供たちは、象を見たいと切望したのであった。決議は松平恒雄参議院議長にも送られ、国会も動いた。インド貿易商が協力を申し出て、子供たちが書いたネルー首相あての手紙を同首相に届けた。

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