イスラム教は紀元後7世紀にアラビア半島で生まれ、東西に広まっていった。陸路および海路を通じてインド亜大陸にも進出した。イスラム教が優勢となったインドでは、仏教はヒマラヤ地方に追われた。ヒンドゥー教は民間信仰として生き残り、特に西部や南部のインドでは、ヒンドゥー教を奉じる藩王国が群雄割拠していた。この状況は、英国がインドに進出し、ついには植民地化するに至っても変わらなかった。

 ヒンドゥー教は、日本の神道のように、多くの神々を崇める多神教である。ヒンドゥー教の神々の中では、特に三大神が重要な役割を果たす。宇宙を創造したブラフマ神、その宇宙を維持し管理するヴィシュヌ神、宇宙が退廃したときにこれを破壊して新たな宇宙を創るためにブラフマ神にバトンタッチするシヴァ神である。

 そして、ここが重要なのだが、ヒンドゥー教では、仏教を起こしたブッダはヴィシュヌ神がこの世を救うために化身となって現れた9番目とされている。

 ヒンドゥー教の神々は、仏教とともに我が国にも導入された。ブラフマ神は梵天、ヴィシュヌ神は毘紐天ないし那羅延天、シヴァ神は大自在天ないし大黒天へと変身して日本に入ってきた。これら三大神の妃たちも、夫に従って日本にやって来た。ブラフマ神の妃神サラスワティは弁財天(弁才天)に、ヴィシュヌ神の妃神ラクシュミは吉祥天に、シヴァ神の妃神パールヴァティは烏摩として日本に「帰化」した。

 「寅さん」で有名な帝釈天は、インドで最も古い雷神インドラである。

 このようなヒンドゥー教由来の神々は、わが国に入ると仏教の守護神となった。京都の東寺講堂の仏像群はヒンドゥー教由来の神々に守られた形で配置されている。三十三間堂の1001体の千手観音たちも、前面にヒンドゥー教由来の神々が配置されて守っている。

ヒンドゥー教の最高の聖地

 安倍首相が2015年12月に訪印した時には、デリーでの首脳会談の後、モディ首相は安倍首相をヴァラーナシ(ベナレス)に招待した。ヴァラーナシはヒンドゥー教の最高の聖地である。ヒンドゥー教徒は、ヴァラーナシを流れるガンジス河で沐浴すれば、それまでの罪はすべて清められると信じている。さらに、ガンジス河畔の火葬場で荼毘に付されそのまま河に流されれば、輪廻転生の業から解放され永遠の生を得ると信じている。

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