貨物新線には「スズキ用」の2階建て貨車が走る

 ちなみに、デリーとムンバイを結ぶ貨物新線を運行する貨車の一部は2階建ての予定だ。これは、グルガオンとマネサールで製造されたマルチ・スズキの小型自動車を2階建てで運ぶことが効率的であるからだ。スズキのインドにおける影響力の大きさを物語るエピソードである。

 スズキは冷戦が継続していた1982年、インドへの乗用車の投資を決定した。鈴木修社長(現会長)の英断と先見の明によるものであった。当時、インドはまだ国家主導経済の真っただ中にあった。経済成長のレベルも国民所得も低く、インド人にとって自動車などは高根の花であった。その中で当時のインディラ・ガンジー首相は、多くの国民が購入可能な国民車構想を打ち上げ、合弁相手を求めた。これに応えたのが鈴木社長であった。

 その後、スズキの出資比率は段階的に引き上げられ、2007年にはインド政府が全株式を売却し、マルチ・スズキは、スズキを大株主とする完全な民営企業となった。この間、スズキは多くの苦難に遭遇したが、乗り越えた。

 現在、スズキのマルチはグルガオン工場のほか、その南のマネサールに広大な第二工場を追加建設した。さらに、グジャラート州に第三の工場が発足した。これはスズキの直轄工場であり、スズキ・モーター・グジャラート社と称する。

 安倍首相とモディ首相は、今回特別にこの工場を訪れる鈴木修会長とともに、工場の開所を祝う予定だ。

インドを囲う産業大動脈構想

 また、インド政府は、デリーとムンバイ間にある6州を通るデリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)構想を打ち上げている。6州に各4つ(大小2か所ずつ)の工業、商業、物流の核となる団地(クラスター)を建設する計画である。クラスターは、前述した貨物専用線に沿って建設する。さらに、この大動脈の中に、6か所のスマートシティーを建設する。スマートシティーは、東芝、日立など日本の代表的メーカーが参加企業を束ねる。

 同様の産業大動脈構想は、チェンナイとベンガルール間の約500キロを結ぶエリアでも計画されている。こちらは、両都市の頭文字をとって、CBICと略称する。

 2017年3月、筆者がDMICを担当する公社の総裁を訪れた際に驚いたことがある。インド政府としては、DMICとCBICのほかに三つの産業大動脈を計画中ということであった。第一は、コルカタからデリー経由でパンジャブ州のアムリトサルに達する産業大動脈。第二は、コルカタからベンガル湾沿いに南下し、チェンナイに至る産業大動脈。第三は、ムンバイから南にプネに向かい、さらにベンガルールに達する産業大動脈である。これらの三つをDMICおよびCNICと結びつけると、インドを大きく囲う円状の産業大動脈になる。遠大な計画である。