働き方の選択肢を増やして、さらにはニッポンの生産性を上げる。こんな掛け声の下で、これまで、またはこれからの働き方を見つめ直している人も多いのではないでしょうか。
 もちろん、副業・兼業は強制されるべきものでも、掛け声一つで広がるものでもないでしょう。
 働き方改革と生産性向上の二兎を追うための、環境や条件はどうあるべきか。
 より良い副業・兼業の浸透に向けて、中堅・中小企業の経営の現場に携わっている立場から、課題とその解決策を中心に日本生産性本部の加藤篤士道主席経営コンサルタントに寄稿してもらいました。

■お知らせ■
日経ビジネスは、読者が自分の意見を自由に書き込めるオピニオン・プラットフォーム「日経ビジネスRaise(レイズ)」を立ち上げました。その中のコーナー「提言 私たちの働き方」では、副業や働き方改革、子育てなど、働き方にまつわる様々なテーマで議論をしています。ぜひご参加ください。

<提言 私たちの働き方>
 New!「効率よく働く」ってどういうこと?
 子育てしやすい社会の条件って何だ??
 副業のリアル お金と時間と場所の現実
 副業は日本を救うのか?

(写真=PIXTA)

 大前提として、副業・兼業は企業側が強制すべきものではない。そのうえで企業側は、多様な働き方の1つの選択肢として副業を希望する人がいれば認めるべきだ。生産性は、アウトプット(産出)÷インプット(投入)で表す。労働生産性はアウトプットに付加価値、インプットに就業者数や労働時間を使う。労働者1人あたりもしくは労働時間あたりで、どれだけの成果・付加価値を生み出したかを示す指標だ。インプットに労働時間を使うことから、労働生産性と副業・兼業という働き方は密接な関係にある。

非正規で穴埋め、短期的な生産性向上に役立つ?

 日本の労働生産性は主要7カ国の中で最下位であるといわれている。日本の企業の労働生産性を産業別にみてみると、1時間あたり付加価値は宿泊・飲食業、卸売業・小売業が特に低い。これらの業種は、「おもてなし」による品質を重視しているが、かけた労力に見合った価格設定が出来ていないことが低生産性の1つの要因だ。また、これらの業種には年間、1週間、1日の中でそれぞれ繁忙期と閑散期がある。簡単にいってしまうと、この閑散期にはお客様が来ないため、付加価値が生まれず、生産性が低くなってしまう。

 例えば、温泉旅館業はお客さんの来館時間がバラバラなため、長時間に渡ってチェックインに対応しなければならない。一方、休みの日やイベント日は来客が集中し、食事の時間も集中することになる。混雑の中でおもてなしするためには、大量の人手を繁忙期に集中して投入しなければならない。小売業にも同じことがいえる。運送業においては、納品時間の集中から、納品先に到着してから納品までの待ち時間などでムダが生じており、低生産性の1つの要因になっている。

 副業・兼業が増えると、労働生産性が高まるのか。その前に現状の問題点を掘り下げたい。中堅・中小企業に限らず、大企業の各事業所でも人手不足の声をよく聞く。企業にとって深刻な人手不足は、特に繁忙期だ。繁忙期に従業員数がそろっていてくれれば、顧客ニーズに応えることができ、付加価値を確保することができる。反対に、繁忙期に充分な従業員数を確保できなければ、ニーズに満足に応えることができず、本来、確保できる付加価値を逃してしまう。チャンスロスが発生したり、不必要な値下げ・値引きが発生したりする状況は、生産性向上の妨げになっていることは明らかだ。

 企業からすれば、繁忙期には副業・兼業であっても、働く人がいてくれれば大変助かるだろう。そのためパートやアルバイト、契約社員、臨時社員等のいわゆる非正規社員を雇うことで対応している。逆に、閑散期に繁忙期と同じ従業員数を雇用していると生産性が落ちてしまう。企業は閑散期には非正規社員の雇用を控え、正社員を中心とした事業運営を行っている。情報漏洩リスクや、他社に転職されるリスクなどから、多くの企業は正社員の副業には消極的であるが、非正規社員に対しては、閑散期において実質的に副業・兼業を求めていることになる。