ガラスのように背景が見える「透明ディスプレー」の実用化が見えてきた。屋外の広告看板だけでなく、自動車のガラスや建物の窓も一変する。テレビやスマートフォンの「次」を模索するメーカーが、競争を加速させている。

(日経ビジネス2017年7月3日号より転載)

 目の前にあるのは、手のひらサイズの透明な“ガラス”。だがスイッチが入った瞬間、カラーで画像が表示された。しかも画像が表示された部分以外は、ガラスの向こうに置かれたものが見えたままだ。

 上の写真はジャパンディスプレイ(JDI)が開発した「透明ディスプレー」。映像を表示しない時の光の透過率は80%で「従来の1.5倍以上」(同社)と高いのが特徴だ。視認性を保つために高い透過率を求められる、自動車のフロントガラスと同程度の透明度を誇る。

 JDIは今年5月下旬に米国で開かれたディスプレー技術の学会「SID」で、この透明ディスプレーを「窓」に見立てたデモを披露した。ディスプレーの向こうに置いた模型を見せたままで、窓の一部に葉っぱや雪を降らせた。従来のディスプレーでは不可能な、「リアルな景色」と「バーチャルな映像」の融合を表現したのだ。

 ディスプレーが透明になると、映像を巡る従来の常識は一変する。例えば、居間に置かれたテレビ。使わないときには透明になり圧迫感が減る。壁際に置くという常識が崩れるかもしれない。

 自動車のフロントガラスにディスプレーを埋め込みカーナビの地図や速度計を表示すれば、交通事故が減らせるだろう。周囲の景色と重ね合わせて情報を確認できるため、ドライバーの視線移動が減るからだ。こうした未来を見据え、JDIに加えてシャープやパナソニックなど、パネルメーカーの開発競争が熱を帯びてきた。

 テレビやスマートフォンなどに使われる一般的な液晶ディスプレーは、電源がオフの時には「真っ黒」だ。一方で透明ディスプレーは、オフの時には背景がクリアに見える。その違いは、使っている部材の配置にある。

 一般的な液晶ディスプレーは、複数の部材を「ミルフィーユ」のように重ねてできている。光源となる「バックライト」や、赤緑青の光の3原色を微細な画素ごとに配置した「カラーフィルター」、光の方向を調整する「偏光板」などを重ね、間に液晶を挟み込む。それらを薄いガラス基板で覆うのが基本的な構造だ。

 スイッチを入れて特定の場所に電圧をかけると、間に配置されている液晶の「向き」が変わる。液晶の向きなどによって、通す光の量や色を制御することで、映像を表示する仕組みだ。

 液晶やガラス基板は透明だが、バックライトは光を通さない。このため、映像を表示していない時のテレビ画面は黒く見える。