働きがい改革の成功に向けた五つのヒント

 では、働きがいを高めるためには、何から手をつければいいのか。

 それに関しては、GPTWのCEOであるマイケル・C・ブッシュの近著『世界でいちばん働きがいのある会社』に詳述してあるが、ここではそのヒントを提示しておきたい。

 会社や職場を変えていくためには、職場の現状を把握し、それを出発点に、なりたい姿になるためのPDCAサイクルを速やかに回していくことを私たちは勧めている。

 そのPDCAサイクルを回す上での五つのヒントは以下の通りだ。

(1)働きがいを見える化し、共通言語をつくる
 よく言われる通り、見えないものはマネジメントできない。従業員の働きがいも、見える化されない限りは、それをマネジメントすることは難しい。見える化の方法は、いくつかある。インタビューなどによるみんなの声の言語化や、私たちが提供しているような従業員の意識調査で数値化するのも一つの方法だ。働きがいという、目には見えないものを見える化することで初めて、それを高めていく方法の議論がスタートできる。

(2)やりがいに目を向ける
 繰り返すが「働きがい」向上の鍵は「やりがい」にある。やりがいとは、まさに「やった甲斐があった」と従業員本人が思えることにある。そう思ってもらうための環境づくりとして、例えば、仕事のプロセスや結果についてのフィードバックが得られるような仕組みをつくることも重要だ。顧客との直接の接点が比較的多い仕事では、放っておいても自分がやったことへの反応や、社会や顧客に対して貢献している実感が得られやすい。注意すべきは顧客からの反応が得られにくい仕事だ。そうした職種では、仕事の結果やプロセスについて、上司や周囲がこまめにフィードバックをしていくことが特に求められる。

 また、何にやりがいを感じるのかは、その人の価値観やライフスタイルなどによって一人ひとり異なる。そのため、一体どういう瞬間にやりがいを感じるのかなどについて、従業員と上司が頻繁に意見交換することも有効だ。

(3)失敗することを前提に「まずはやってみる」
 日本では失敗に対する許容度が低い。それは、働きがいを高めるための施策を検討する際にも、その考え方が障害になることがよくある。日本の多くの企業は、何事にも慎重だが、働きがいを高めるための施策の検討にも時間をかなりかける。検討を重ねすぎて、施策の検討だけで数年たってしまうケースも少なくない。検討するうちに環境が変わり、施策導入を見送ってしまうことさえある。これでは何の変化も生まれない。こうした傾向は、「働きがいのある会社」調査のスコアの低い会社において多く見られる。「失敗することは当たり前、効果がないならばすぐにやめればよい」というぐらいの寛容な気持ちで、まずはやってみることを重視したい。

(4)会社や仕事の意義・価値を徹底的に語る
 日本企業の取り組みにおいて、最も欠けていると思われることの一つが、会社や仕事の意義・価値を語ることだ。かつてこうした価値観や存在意義は、明文化されたものはないが暗黙知として組織の中で「何となく」共有されてきた。しかし今や時代は変わった。組織の構成員は、多様化している。例えば、平成育ちの世代に、人の背中を見て学べというやり方は通用しない。これまで、語られることのなかった会社や仕事の意味や価値を、その都度、はっきりと口に出して議論し、それらを最も重要な信条・ポリシーとして常に意識して業務に取り組めるように変えていく必要がある。

(5)強みを生かす
 GPTWでは、「強みを生かす」という考え方を大事にしている。私たちは日々、様々な企業経営者や人事の方に調査結果を報告している。その際、多くの経営者や人事の方から真っ先に尋ねられるのは、「私たちの課題は何ですか?」ということだ。このように問われた場合、「課題」に加えて「強み」も必ず同時に伝えてはいるが、「強み」についてはあまり関心を示されないことも多い。

 もちろん、「成長の機会(課題)」を克服していくことは重要だが、それにとらわれるあまり、強みまでなくしてしまっては意味がない。企業にはそれぞれ、独自の強みが必ずある。それをしっかりと特定して全員で認識し、大切にし、生かしていただきたい。

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