避暑地に行くように宇宙に行く

黒田:もし気軽に宇宙に行けるようになったら、私は何度でも行っちゃうと思います。「そろそろ涼しいところに行きたい」みたいに、「そろそろ無重力ほしい」って。

石田:避暑地に行くのと同じような感覚で、宇宙に行くのが当たり前になる時代がくるかもしれませんね

黒田:「心が軽くなる」って言うじゃないですか。嫌なことがあると「心が重くなる」。無重力空間に行くと、体だけじゃなくて、心も軽くなるかもしれない。

石田:宇宙に行くと、体にいろいろ変化が起きるんですよね?

黒田:筋肉は落ちていきますが、関節が緩んで身長が伸びます。朝起きたら、身長が2センチ伸びていた、ということもあるそうです。

「宇宙プロレスで無重力の新ワザをつくる」

石田:『宇宙ビジネス入門』では、ITとかロボティクスとかAI(人工知能)とか、そういう技術と宇宙とのつながりについて書きましたが、そのほかにも宇宙ビジネスの注目分野があと2つあります。宇宙にたくさんの人が行くようになった時に必要になるのはライフサイエンスとエンタテインメントです。

 宇宙飛行士は、1日の3分の1は寝ていて、3分の1は仕事をしていて、あと3分の1は健康維持のための運動をしたりしています。人が宇宙で健康に暮らしていくためのライフサイエンスは重要な分野です。宇宙特有の微小重力環境を利用した様々な科学実験なども進み始めています。

 そしてもう一つ、エンタテインメントも欠かせません。なぜかというと、仮に私たちが1週間宇宙に行けるようになったら、宇宙でヒマになると思うのです。宇宙飛行士のように仕事をするわけではないから、宇宙空間で空き時間がたくさんある。だから娯楽が必要になるというわけです。

 2000万円くらい払って弾道宇宙旅行に行くと、5分くらい無重力体験ができるわけです。1回目は普通に楽しむと思うのですが、2回目に行くことになったら、まず写真を撮って、後でインスタグラムに上げて、というようなことをすると思います。3回目以降は、もっといろいろなことをしたくなる。

 僕の友人に「宇宙プロレス」を真面目に考えている奴がいます。「無重力空間では、地球上にはないワザができるはずである」と。

米国では「みんなが宇宙にいくべき」

石田:米国で宇宙ビジネスに挑んでいる起業家には、「宇宙の民主化」という人が多いんですね。政府を中心に限られた人がやってきたのが「宇宙開発」だったのですが、「宇宙ビジネス」になった瞬間に、多くのビジネスマンが宇宙で活躍する時代が来るというわけです。文系も理系もいるし、技術屋さんも戦略を考える人もいるし、総務や財務の人も、宇宙に関わるわけです。

 それから、ユーザーにとっての宇宙があって、特に大型ロケットの開発や宇宙ホテルの開発などをしている起業家は「みんなが宇宙に行くべき」という考え方ですね。

黒田:日本の学生さんと話をしたりすると、「宇宙は好きだけど、どういうふうに仕事にしていいかわからない」「私は文系に進むから、もう宇宙には関われない」と言う人が多いんですが、これからはマネジメントだったり、法律だったり、宇宙にはいろいろな関わり方がありますよね。そのギャップが大きければ大きいほど可能性があるんじゃないかと思っています。

石田:黒田さんは、どういう人に宇宙に来てほしいですか?

黒田:もっと女性が宇宙に興味を持ってほしいですね。「星がきれい」と思っている人に、より深いところまで宇宙のことを知ってほしいと思っています。

石田:そういう人に何を伝えると宇宙に興味がわくんでしょうかね?

黒田:うーん、ファッションとか?(笑)

石田:先日、スペースXが宇宙服のデザインを公開しましたが、宇宙服は基本的に「この色」というのがあって、宇宙空間で活動するときに目立つとか、地球に帰ってきて海に着水した時に目立つとか、そういう色を選んでいるそうです。

 でも、たくさんの人が宇宙に行くようになると、いろんな宇宙服が出てくるかもしれないですね。もちろん、安全や安心が最優先なのは変わらないですが、その先には弾道宇宙旅行の5分間の間、例えば着ぐるみを着たいという人も出てくると思うんですよ。みんなが宇宙に行く時代を作るというのは、そういうことでしょうね。