「信じている世界が広ければ広いほど、深ければ深いほど」

石田:信じている人じゃないとできない。宇宙は特にそうかもしれないですね。どれくらい信じられるか。

 今日、3年前にサンフランシスコで起業した方のフェイスブックを偶然読んでいたら、彼が途中で挫折しそうになったときに、ある人からこう言われたそうです。「起業っていうのは、起業家が信じている世界が広ければ広いほど、深ければ深いほど、優秀な人を引き付けて、共鳴する人が集まるので、信じられなくなったらやめなさい」。

 「良いこと言うなあ」と思って読んでいたんですが、宇宙ビジネスは本当にそうですね。なぜかというと、時間軸がすごく長い。衛星のビジネスは比較的短期的に成果が出ますが、宇宙資源探査などはとても長期間にわたります。だから信じ続けることがすごく大事なんです。創業者が信じているから、支援をしている人も、まわりにいる人も、その人を信じて助けている。信じ続けられる最初の1人が大事だということですね。

自分が宇宙に行きたい人 vs 誰でも宇宙に行ける世界を作りたい人

石田:面白いのは、宇宙ベンチャーをやっている人は、みんながみんな、自分がいの一番に宇宙に行きたいと考えているわけではない。そうじゃない人もたくさんいます。

 ヴァージングループ創業者のリチャード・ブランソンは、弾道宇宙旅行の実現を目指すヴァージン・ギャラクティックという会社を作りました。そしてうまくいけば来年には本人が乗ると言っています。彼はもともと冒険家ですからね。

 対照的なのは、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスです。ベゾスはブルー・オリジンというロケット打ち上げのベンチャーをやっていますが、彼は自分が宇宙に行きたいというよりも「みんなが安全に宇宙に行けるような時代をつくりたい」というわけです。最初の有人飛行にはプロの宇宙飛行士が搭乗すると言われています。

 米国のカンファレンスでベゾスが話しているのを聞いたことがありますが、彼のビジョンは、地球の人口問題とエネルギー問題を解決するために、「数百万人の人が宇宙で暮らし、働く時代をつくること」です。

 いまこの瞬間、宇宙に何人の人がいるかというと、国際宇宙ステーションに搭乗している数人だけです。これが「100人が宇宙に行く」「1万人が宇宙に行く」「100万人が宇宙に行く」ということになると、求められるコストも違うし、求められる安全性も違うし、ロケットを飛ばす回数も違う。革命的にいろいろなことが変わらないと、実現できないわけです。誰でも宇宙に行ける時代を作るのは簡単じゃない。それは大きなチャレンジですね。

一番多いのは「スターウォーズの世界を作りたい人」

石田:宇宙ベンチャーをやっている人には、「スターウォーズみたいな世界を作りたい」と思っている人たちがいます。これは日本もアメリカも同じです。いろんな惑星に人類が住んで文明がある世界を作りたい。世代によって、スターウォーズ世代だったり、スタートレック世代だったり違いがありますが、SFの影響は大きいですね。スペースXのイーロン・マスクも着想の起点は異なるかもしれませんが、同様なビジョンを掲げています。

 それから米国では、1969年のアポロの月面着陸のテレビ中継をライブで見た世代の人たちが、NASAを勤め上げたあとで「宇宙ベンチャーやります」というようなケースが多い。いま宇宙ホテルを作る計画がいくつかあるんですが、その中の有力企業のCEOは、もともとNASAの国際宇宙ステーションのプログラムマネジャーだった人です。

 米国でも、宇宙業界はこれまでいわゆるエスタブリッシュメントの世界でした。国の機関や大手の企業が中心です。でも、そういう人たちが50代、60代になってから、幼いころの夢を追って宇宙ベンチャーをやる。米国の宇宙カンファレンスでは、よくスピーカーの人が参加者に向かって「アントレプレナーの人、手を挙げて」って聞くんですが、そうすると中高年のおじさまたちがバババッっと手を上げます。